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人間だれしも年をとれば老います。耳が遠くなったり、目が悪くなったり、臭いに鈍感になったり、皮膚がかさかさになったり、感覚の衰えは隠しようもありません。
 老化を止めたり、若返ったりさせることは、人類始まって以来の願いです。でも、少なくともこれは現在の科学技術では不可能なことです。しかし、いろいろ工夫することで、老化の速度を少し遅らせることはできそうです。
 では、どうすれば感覚器の老化を遅らせることができるのか。世界の老化研究の成果などを踏まえて、感覚器の老化防止について考えてみましょう。

老化について

 ちまたでは、「○○でお肌の若返り」とか「老化防止に毎日××を」など、科学的根拠に乏しい、怪しげな情報があふれています。でも、老化とは何か、老化はどうやって起きるのかをよく理解していれば、何か特殊な食品を食べたり、特殊な化学物質を塗ることで画期的に老化が防止できる、などということがあり得ないことはすぐに分かります。しかし残念なことに、老化の仕組みはなぞばかりで、はっきりしたことはまだ分かっていない、というのが現実です。とはいえ、昨今のバイオ技術などの力でその秘密のベールが少しずつ明らかになっています。そうした成果を概観したうえで、老化に対してより正確な知識を持って、感覚器の老化を遅らせる方法を考えてみましょう。
 老化はからだ全体で徐々に進行していく現象で、単一の器官や物質が原因で起こる病気ではありません。従って、感覚器の老化予防といっても、基本的にはいわゆる老人病とされる痴ほうや動脈硬化、骨粗しょう症などの予防と同じ考え方になります。つまり、規則正しくストレスのない生活、緑黄色野菜や牛乳などを十分にとるなどバランスのよい食事、毎日の適度な運動などで、これは生活習慣病の予防とも共通しています。あえて言えば、皮膚や眼の老化予防として、戸外で紫外線をあまり浴びないように注意することがそれに付け加わります。
 「そもそも老化とは何か」「どうして老化が起きるのか」ということを考え、老化という現象全体を把握したうえで、個々の感覚器について考えてみましょう。

老化と平均寿命

 まず老化とは何かという問題ですが、これが一筋縄ではいかない難問です。それは、生物界では老化しない生物の方が多いからです。DNA(RNAの場合もありますが)をたんぱく質の膜に包んだだけのウイルスは、動くことも、食べることもなにもしない、生きているのか死んでいるのかすらよく分からない不思議な存在で、永遠の命を持っているという言い方もできます。また、バクテリアのような単細胞生物は、環境さえ整えれば、1つが2つに、2つが4つに、4つが8つにと、無限に分裂して、いくらでも増えていきます。そこには、老化して死んでいく個体などありません。つまり単細胞生物もまた不老不死なのです。杉の木だって銀杏の木だって、環境さえよければ老化などという言葉とは無縁に何百、何千年と生き延びて天を突くような大木となります。
 ところが人間の場合は、どんなによい環境で生活しても、長寿の限界は120歳前後とされています。もし、まったくばい菌のいない場所で、十分な栄養下で生活したとしても、人間などほ乳動物の寿命には必ず限界があるのです。
 明治後期から大正時代の日本人の平均寿命は、男女とも44歳前後でした。それが昭和に入ってどんどん延び始め、昭和30年では、男64歳、女68歳。同50年では男72歳、女77歳、平成10年には男77歳、女84歳となりました。このように平均寿命が延びたのは、抗生物質が発見され、公衆衛生が充実し、乳幼児の死亡も減り、国民の栄養状態がよくなり、各種医療技術が進歩してたいていの病気が治療できるようになったためです。つまり、平均寿命が延びたのは、日本人の老化そのものが遅くなっているというよりは、医療、公衆衛生などの進歩の成果なのです。
 しかしその一方で、昭和初期の70歳と現在の70歳とを比べると、かつてのように腰が曲がっている人は少ないし、顔のしわもそんなに目立たないことも事実です。つまり、過酷な野外の長時間労働が減って快適で清潔な環境での労働が増えたことや、炭水化物中心の質素な食事から栄養豊富でバランスのよい食事ができるようになったことで、皮膚や骨などに現れる一部の老化現象については、確かにその老化速度が遅くなっているという言い方もできるかもしれません。
 つまり、老化を遅らせるということと長生きをするということは、似た考えではあるけれど、まったく同じではないということです。ここでは、長生きをするためというよりも、より快適で楽しい老後を送るため、つまりQOL(生活の質)を上げるために、老化の問題を考えてみましょう。いずれは、120歳という人間の寿命の壁を突き破る画期的な老化防止技術が開発されるかもしれませんが、それはまだ先の話でしょう。


単純でない老化現象

 老化とは、加齢に伴って起こる非可逆的な生理機能の低下のことです。寿命が近づくにつれて人間は、耳が遠くなったり(難聴)、血管が硬くなったり(動脈硬化)、骨が折れやすくなったり(骨粗しょう症)、眼の水晶体が濁ったり(白内障)、頭の働きが衰えてきたり(老人性痴ほう)します。これが老化現象です。 機能の衰えの多くは、臓器の縮小という形で現れてきます。手足の筋肉はやせ細り、各種臓器も小さくなり、骨の密度も低下してきます。もちろん脳細胞も減り続け、CTスキャンなどで調べると脳そのものが委縮しているのが観察されます。細胞レベルで考えると、人のからだから細胞を1個取り出して培養してみると、最初のころはバクテリアのように活発に分裂を始めますが、いずれ増殖をやめて、ついには死んでしまいます。この分裂できる回数が多いほど若い細胞ということになります。
 一方、お年寄りのからだから取った細胞は、若い人の細胞ほど元気に分裂する力がありません。肝臓や皮膚などは一部を切除しても、いずれもとの形に戻りますが、若い人の細胞ほど、この再生力が強いのです。この細胞の分裂能力だけで老化現象の説明ができれば、ことは簡単なのですが、そういかないのが老化研究の難しいところです。例えば、脳の神経細胞や心臓の筋肉などは、生まれた時にすでに増殖を止めており、以降増殖しません。細胞そのものの機能も、年をとるにつれてさまざまな形で衰えていきます。つまり、細胞の老化の問題には、細胞の数の問題と質の問題の2つの側面があるのです。ところで、人間のからだの中にも例外的にバクテリアのようにいつまでも分裂できる不死の細胞があります。それは生殖細胞とがん細胞です。

老化のメカニズム

 どうして生体に老化が起きるのかという問題は、今でも生物学の最大のなぞの1つです。大昔からさまざまな説が提案されては消えています。現在、有力とされているいくつかの説を紹介しましょう。
 老化の時間を刻むタイマーとして最近注目されているのがテロメアです。ヒトの細胞の中には48種類の染色体がありますが、その染色体それぞれの末端にテロメアという構造があります。例えば、縄やひもは、端からほどけないように別のひもで縛ったり、金属や接着剤などで固定したりします。テロメアも同様に、細くて長い染色体が端から壊れないようにと、端を固定して遺伝子の安定化を図っています。このテロメアは、細胞が分裂するごとに一定量短くなり、ある程度短くなると細胞そのものが分裂できなくなり、そして寿命を迎えるのです。テロメアはいわば分裂のための回数券といえます。実は、生体にはこのテロメアを修復する酵素、テロメラーゼがあるのです。
 不死の細胞である生殖細胞とがん細胞では、このテロメラーゼが働いて、テロメアは常に一定量確保されるのです。このため永久に細胞分裂が可能なのです。一方、普通の体細胞ではテロメラーゼは働いていません。もし、体細胞でもこのように、回数券を節約したり修復したりする方法が見つかれば、老化を防止することも夢ではなくなります。
 実際、1998年には米国のジェロン社とテキサス大学の研究グループが、テロメラーゼの遺伝子を人間の体細胞に組み込んでその細胞の分裂回数を増やすことに成功、世界中の注目を集めました。先ほど、老化は細胞数の減少だけでなく、個々の細胞の機能低下でも説明できると紹介しました。細胞数の低下を説明する代表がテロメア説なら、機能低下を説明する代表が活性酸素説です。強い酸化作用があるフリーラジカルや活性酸素がたんぱく質や遺伝子に傷害を与え、その傷害が積み重なって老化が進むという考えです。確かに、皮膚の老化は紫外線によって加速されます。これを「光老化」といいます。また、動脈硬化も活性酸素が脂質を過酸化脂質に変えることで進行します。また、ネズミより犬、犬より馬、馬より象といった具合に、体重あたりの酸素消費量が少ない生物ほど寿命が長いことからも、この活性酸素説の妥当性が理解できます。しかしその一方で、ヒトの体内には、フリーラジカルや活性酸素を無毒化する酵素がきちんとあります。また、食品中のビタミンCやEなどにも抗酸化作用があります。このため、老化防止というと、この抗酸化作用をいかにうまく利用できるかが一つのポイントとなっています。このため、日焼け止めクリームなどで紫外線をできるだけ直接浴びないようにすることや、ビタミンCやEを多く含む緑黄色野菜を多くとることなどが推奨されるのです。1998年に、ハエにSOD(スーパーオキサイドディムスターゼ)など抗酸化酵素の遺伝子を組み込んだところ寿命が2、3割延びたという研究成果が「サイエンス」という科学誌に発表されました。線虫でも似たような研究成果が報告されており、活性酸素が老化に関係していることはほぼ間違いないようです。
 ここで少し気になることがあります。適度な運動が健康や老化防止によいことは今や常識ですが、活発に運動をして酸素を大量に消費することは活性酸素による老化を促進することにならないか、という疑問です。これについては、次のようなメカニズムが働いていると考えられます。激しい運動をしている選手と一般学生を調べたところ、活性酸素の1つであるスーパーオキサイドを消してしまう酵素、スーパーオキサイドディムスターゼ(SOD)が選手の方でより活性化されていたという報告があります。つまり、運動をすると活性酸素が増えるが、一方で、それに見合って活性酸素に対する防御システムも強化される、ということのようです。
 生命の基本的骨格はすべてDNAに記載されています。老化の道筋もきっとこの中にあるに違いありません。そこで、人の寿命を決定している遺伝子を探す研究が世界的に行われています。早老症ウエルナー症候群という遺伝性の病気があります。20歳代で白髪のしわの多い顔となり、動脈硬化や骨粗しょう症の老化現象が顕著となり、だいたい40歳代で亡くなる病気です。この病気が、DNAの組み替えに関与するDNAヘリカーゼという酵素の異常で起きていることが最近分かりました。
 このほかにも、早老症にはコケーン症候群などいろいろあり、さまざまな遺伝子が老化にかかわっていることが推測されます。早老症という病気があるならば長寿症という病気(?)があってもいいような気もしますが、どうもそれはないようです。自然界はいわば巨大な実験場です。そこで長寿症が出てこないというのだから、遺伝子を操作して人間をより長寿にするということはかなり難しいことなのでしょう。でも、線虫などの下等生物レベルなら、遺伝子を操作して長寿を実現したという研究報告がいくつかあります。
 以上のことから、老化現象は、テロメア、活性酸素、遺伝子などが複雑にからみあって起こっていると考えた方がよさそうです。


目の老化

 腕を伸ばして新聞を読んでいるお年寄りの姿を見ることがよくあります。年を取ると、近くの物が見づらくなります。いわゆる老眼です。目の中のレンズ(水晶体)は周りの筋肉から引っ張られると薄くなり、焦点が遠景に合うようになります。また、逆に引っ張る力を弱めると水晶体自身の弾力で元に戻って分厚くなり、近景に焦点が合います。老化が進むと、水晶体が硬くなり弾力性が失われるので、筋肉の力を弱めても水晶体の収縮が不十分となり、近景に焦点が合わなくなります。これが老眼が起こる理由です。また、厚さを調整する筋肉も衰えてくるので、焦点の調整も難しくなります。水晶体が硬くなる理由は、水晶体を構成しているたんぱく質が、毎日そこを通過する光のせいで、長い時間に少しずつ化学変化を起こして変性するためです。
 水晶体がにごってしまう白内障も、同じ理由で起きる目の老化現象です。これは、透明なプラスチック製品を戸外に出しっぱなしにしておくと、太陽光で劣化して、いつのまにか白くにごり、硬くてもろくなる現象にそっくりです。白内障かどうかは、左右、片目で外の景色を見て、見え方に違いがないかをチェックすることで分かることがあります。白内障については昨今、よい眼内レンズが開発され、外科手術で比較的簡単に治療できるようになりました。
 このような水晶体のたんぱく質の変性を起こす最大の原因は紫外線です。ですから、遠視や白内障を予防するには、日差しの強い日の外出は避けたり、サングラスを着用するなどの紫外線対策が有効です。年をとると老眼や白内障だけでなく、視力の低下、色覚の低下、眼球運動の衰えなどさまざまな面で衰えてきます。これらの老化は神経系がかかわってくるので、その老化防止策は遠視や白内障のように単純ではありません。
 視神経繊維は若いころは150万から170万本あるとされますが、これが毎年5,000本程度のペースで脱落します。視神経繊維は脱落したら再生しないのですが、これくらいのペースだったら死ぬまで日常生活で大きな支障を来すことはないそうです。でも、老人に多い原発緑内障は、高い眼圧が長期間続くことで視神経が壊れる病気ですが、失明することがあるので要注意です。病気が進行していても本人がなかなか気付かないことが多く、早期発見、早期治療が大切です。

耳の老化

 年を取ると耳が遠くなります。一般的には、高い音から聞きづらくなります。この難聴の問題には、単に「音が聞こえづらい」という側面と、「会話がよく聞き取れない」という2つの側面があります。後者の問題には、脳の中枢神経の老化が隠されています。つまり音としては聞こえているが、それが聴覚の伝達経路を伝わる過程で正しく伝わらず、言葉として理解できなくなっているのです。
 こうなると、耳だけの問題というよりは脳の問題になります。難聴になったら、早めに補聴器を使用するとよいとされています。状態がひどくなる前から補聴器を使うことで、早くから操作に慣れるとともに、衰えかけている聴覚の伝達経路を刺激して難聴が進むことを少しでも遅くできるのではないかと考えられるからです。また、最近の補聴器は、単に音を大きくするだけでなく、聴覚の伝達経路の障害で歪んで聞こえる話し言葉を、本人にとってより聞き取りやすいように補正することもできます。
 お年寄りの中には、自分の耳が遠くなっていることをなかなか認めたくなくて、補聴器をつけたがらない人がいます。しかしそうすると、周囲の人は何回も同じことを言わなくてはならないし、大きな声で話さなくてはなりません。このため周囲の人が話しかけることを苦痛と感じるようになり、だんだん会話が減ってしまいます。これでは周囲に迷惑なだけでなく、本人にとってもたいへんに不幸です。
 筋肉や骨は、普段負荷をかけて使っていないとすぐに衰えてきます。プロサッカー選手ですら、けがで長期間入院すると、太股がすぐに細くなったりします。これを廃用性委縮といいます。感覚器だって同じことです。多くの人と活発に会話をして聴覚にいつも刺激を与えていることが、聴覚の老化防止につながるのです。


鼻の老化

 「臭覚が衰えた」といって病院に行くお年寄りはあまりいないでしょうが、臭覚も年とともに衰えます。食事のおいしそうな匂いが分からなくては食欲も減退するし、火事が起きても焦げ臭いのになかなか気付かないなど、日常での不都合は多いものです。臭いの情報は、鼻の臭上皮から臭神経を通って脳に情報が伝わります。つまり、聴覚と同様に臭覚も脳が密接にからんでいます。花や料理や香水など、日常いつも香しい匂いに関心を持つことが、廃用性委縮を防ぐことになります。鼻炎など鼻の病気をできるだけ早期に治療することも大切でしょう。

味覚の老化

 入院患者のなかには、「食事だけが楽しみ」というお年寄りがいます。それが、味が分からなくなっては生きている喜びすらなくなってしまいます。しかし、この味覚も年を取るとともに衰えていきます。原因としては、服用している薬の副作用で味覚異常が起こるケースや、口腔内の病気でだ液の分泌量が低下したため味覚異常が起きるケース、亜鉛の欠乏症などで起きるケースなどがあります。
 同じ亜鉛欠乏症のラットでも、若いラットは味覚異常になりにくいが、老いたラットは味覚異常になりやすいという実験結果もあります。甘い、塩辛い、酸っぱい、苦いという味を感じる、舌にある味蕾の数も加齢とともに減少するという報告もあり、老化は味覚異常を加速させる要員です。でも考えてみると、テレビに出ている料理評論家には高齢者が多い。それは、料理の味を云々するためには、それなりの経験が必要だということなのでしょう。別の見方をすれば、いつも味に関心を持っていれば年をとっても味覚の衰えはかなり抑えられるということをも示しています。
 「友人とのグルメ食べ歩き」などは、よく歩き、よくしゃべり、そしておいしい物を食べるということで、老化防止には絶好の企画でしょう。

皮膚の老化

 皮膚も、熱い、冷たい、痛いなどさまざまな情報をキャッチする重要な感覚器です。皮膚の老化は、だれでも一目で分かる典型的な老化現象で、女性ならだれしも気にするところです。皮膚は老化すると、かさかさに乾燥したり、シミが出たり、しわが寄ったりします。皮脂腺が衰えてあぶらの分泌が減り、汗腺も老化して汗があまり出なくなります。皮膚に深いしわができるのは、真皮の中のコラーゲンが減って、皮膚に弾力性がなくなるためです。このような皮膚の老化に深くかかわっているのが紫外線です。紫外線が強い海で働く漁師さんの顔には、深いしわがきざまれていることが多いものです。そんな人でも、めったに太陽にさらさないお尻はすべすべとした肌を保っています。ですから、日差しの強い日の外出はさけ、外出する時は長袖の服を着たり、帽子をかぶったり、紫外線を遮断するクリームを塗るなどの対策が必要です。まして、海岸での甲羅干しなどは決してしないことです。
人類が初めて経験する人口高齢化現象。わが国ではそのピッチが急速に進み、30年もしないうちに空前のピークを迎える。現在、寝たきりや痴ほうを含め、老化現象や老人病を防ぐ方法についてはさまざまな角度から研究が進められているが、どこまで探究されてきているのか。そもそも人間の老化や痴ほうはどのようなメカニズムで、なぜ起こるのか。肝心の予防や治療法のメドは、どこまで立っているのか。実をいうと老化についてはまだほとんど分かっていないのが実情だが、今回は老化促進の要因として注目を集めている活性酸素と、アルツハイマー病に絞り、基礎老化学や臨床の現場で得た情報を報告しよう。

要因は活性酸素とストレスとする説

 東京大学理学部動物学教室放射線生物学講座の加藤邦彦助手は、比較生物学的視点から老化メカニズムの解明に挑戦している。まず、基礎研究では、老化についてどこまで分かってきているのだろうか。
 「結論を先にいえば、現在世界の学者の間で受け入れられている老化メカニズムの統一的な理論体系は、まだありません。しかし、老化を促進する要因は、活性酸素とストレスが有力です」ヒトはなぜ老いるのか-これは、われわれにとって最大の関心事である。だが実際は、まだほとんど分かっていない。
 「老化メカニズムの解明には、生物の進化(遺伝子変化)の過程で、老化はあまり問題にされなかったことを理解しないと難しい」と、加藤助手は次のように説明する。野性動物は、子孫を残せば一応、種としての役割は終わる。老化して歯や手足が不自由になればエサが取れなくなったり、弱肉強食の世界では他の動物に食べられたりして生き残るのは困難であった。しかも長生きすれば、エサをめぐって子どもとの闘いも起こるだろう。種にとっては「生殖」までが重要であり、その後の一生はたいした問題ではなかったのである。このため、生殖後の老化過程は進化のふるいにかけられなかった。

強烈な酸素の毒性

 老化促進の要因として関心を集めている活性酸素とは、どんなものなのか。その前に、酸素そのものについての説明がいる。酸素は人間だけでなく、ほ乳動物の生命維持には不可欠なものである。
 「ところが、酸素はもともと非常に毒性が強いんです。現在、大気中には20.9%の酸素が含まれているが、その濃度を上げるとどうなるか。ネズミの実験では、酸素濃度を50%に上げて飼育すると、通常三年半の寿命がその半分にまで短縮してしまう。さらに100%純粋な酸素の下に置くと、一週間以内に絶命してしまった。酸素の毒は、それほど強烈です。人間だって100%酸素下では、恐らく約半日で肺などに障害が出てくる。さらに吸い続ければ、確実に死ぬでしょう」酸素濃度を高めると、健康にもプラスになるのではないか。そう考えるのが普通である。ところが、加藤助手は「かつて高濃度の酸素が入った保育器で起きた赤ちゃんの未熟児網膜症、あれが典型的な例。大きな社会問題になったので覚えているでしょう」と、こちらの理解を促す。
 「その毒性の本体こそが、非常に反応性に富んだ危険分子の一種である活性酸素です。大体、呼吸で消費する酸素の約2%が体内で活性酸素になり、細胞膜や遺伝子、酵素を傷つけ、いためつけるので″酸素毒″とも呼ばれている」と、加藤助手。活性酸素をもっと難しくいうと、スーパーオキサイドラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素などの総称。細胞の不飽和脂肪酸を酸化、有害な過酸化脂質を作り出す。この″脂肪のサビ″ともいえる過酸化脂質が害を与え、その蓄積が結果的に老化を促進するという見方である。
 この活性酸素に着目、それが老化を促進し、寿命にも深く関与していることを明らかにしたのは、基礎老化学の研究の成果である。加藤助手が1977年から2年間留学、指導を受けた米国ボルティモア市にある国立老年学研究センターのカトラー博士も、活性酸素と老化の関係に早くから注目していた一人である。
 「ごく最近では、活性酸素ががん、脳卒中、糖尿病、心筋こうそく、アトピー性皮膚炎、リウマチなどの数多くの病気にも関連していることが分かってきた。今や医学、薬学の最前線では『風邪は万病のもと』ならぬ『活性酸素は万病のもと』というのが共通認識になっている。特に、がん研究の専門家が高い関心を示していますね」

効用著しいベータカロチン

 となると、この活性酸素の発生を抑えたり、コントロールすることができれば、老化やがんを予防することになるが、どうか。
 「人間を含め、呼吸しなければ生きていけない動物は、活性酸素の毒に対する七重、八重の制御システムを備えている。それでも防ぎ切れなくなって障害が出てくるわけだから、日ごろから防衛力の増強、維持に努めることと、不必要に活性酸素の発生量を増やさないことが肝心です」と、加藤助手は次のような防衛力増強のための方策を勧める。
 酸素毒を水などに分解してしまうSODという酵素や、抗酸化剤と呼ばれるビタミンC、ビタミンE、さらにニンジンやカボチャ、トマトなど緑黄色野菜に含まれるベータ(β)カロチンなどを摂取することだ。
 「このうちでも特に、βカロチンが活性酸素をやっつける力は強烈で、最近ではβカロチンの血中濃度が高い人は発がん率も低いという調査結果も出た。βカロチンは健康食品、がん予防食品としても世界中で脚光を浴び始めている。基礎老化研究には、栄養学的アプローチが非常に重要になってくるでしょう」このように活性酸素が老化との兼ね合いで出てくる場合は、その毒性が老化を促進する″極悪人″として扱われる。しかし「活性酸素で厄介なのは、確かに毒ではあるが、同時に薬としても作用するということです。体内にがん細胞や病原菌などの異物が侵入してきた場合、その強力な毒で排除し、体を守っている。敵に回すと怖いけど、味方に付けたらこれほど頼もしいものはない。それが活性酸素の素顔なんです」とも。
 老化促進のもう一つの因子、ストレスについてはどうか。加藤助手は「ストレスは、われわれが考えていた以上に怖い。現代では成人病の元凶といえるんじゃないか。高血圧、動脈硬化、糖尿病を高進し、がんや感染症に対する抵抗力も弱くする。老年痴ほうとストレスの関連をいう人もいる」と、ストレスが人間の健康に与える悪影響の大きさを強調している。

長寿が生んだアルツハイマー病

 現代医学、科学の進歩は、われわれに長寿をもたらした。しかし、命を永らえたことがすべて幸福につながっているかといえば、もちろんそうではない。さまざまな老人病や老化現象が、長い老後生活の中から新たな難題として生まれてきた。その代表の一つが、老年期痴ほうであろう。
 老年期の痴ほうには、大ざっばにいって脳こうそく、脳出血などを主な原因とする脳血管性痴ほうと、アルツハイマー病がある。65歳以上の日本人の約6%に痴ほうがあり、そのうち30%前後がアルツハイマー病と推定されている。ここで問題にしたいのは、今や老人ぼけの代名詞になった感のあるアルツハイマー病である。
 このアルツハイマー病については、従来アルツハイマー型痴ほうとかアルツハイマー型老年痴ほうなどとも呼ばれてきた。事実、この二つは発症年齢などに違いがあり、厳密には別の病気である。だが、専門家の間では一応アルツハイマー病に統一されている。
 肝心のアルツハイマー病は、原因不明のまま脳の委縮と変形が徐々に進行し、完治しないという難病だ。「厄介なのは、高齢になるほどかかる頻度が高くなり、特に80歳を過ぎると急激に増えることだ」と、この6月まで東京都老人総合研究所副所長だった柄沢昭秀・日本社会事業大学教授(老年精神医学)。気になるのは、わが国の高齢化は今後さらに急ピッチで進むことである。先ごろ日本大学人口研究所が発表した推計によると、現在約百万人の痴ほう老人は、高齢化のピークに達する2020年ごろには322万人にまで膨れ上がる。
 「アルツハイマー病についての最近の研究成果には、目を見張るものがある。患者の脳内に蓄積するベータ(β)タンパク質の研究が進み、遺伝学的に単一疾患ではなく、症候群であることが分かってきた。原因になる遺伝子の一つも、五年以内に突き止められるでしょう」
 このように、アルツハイマー病の原因解明について明るい展望を語るのは、東京大学医学部脳研究施設の井原康夫教授(脳病理学)。東京都老人総合研究所の臨床第2生理室長から教授になり、アルツハイマー病の患者の脳内の蓄積物質の生化学的解析を武器に、この難病の原因を追究している。
 井原教授によると、ヒトの脳には、生まれながらに数億個といわれる神経細胞がある。細胞は増殖することなく、加齢とともに死滅する。特に四十歳ごろからは、一日に数万個単位で減っていく。アルツハイマー病の患者の場合は、その減り方が著しいのが特徴だ。脳細胞の急激な減少により、この病気の特色である脳の委縮が全体的に現れ、スカスカになってしまう。
 「その縮んだ脳の中に、解明の手掛かりになる貴重な遺留品が残されている」
 それが神経原線維変化(PHF)、老人斑と呼ばれる二種類の病変である。老人斑は、いわば脳内の染みで、その中心に細い線維の塊のアミロイドが大量に蓄積する。そしてPHFとアミロイドの主成分が、それぞれβ、タウという特殊タンパク質であること、最初にβが蓄積し、タウはかなり遅れてたまることが突き止められた。

遺伝因子説に朗報続く

 ところで、アルツハイマー病の原因解明も明るい光が見えてきたとはいえ、まだ決定打はない。これまでに、さまざまなアプローチによる原因説が打ち出されてきた。例えば、神経伝達物質の一種であるアセチルコリン減少説、感染説、アルミニウム毒害説、それに遺伝因子説などなど。そして現在、基礎医学の最新の成果は、遺伝性アルツハイマー病を研究するグループからもたらされたものである。
 六十五歳以下の初老期に発症するアルツハイマー病は従来、遺伝的背景がつよいとされてきた。それが昨年11月、米国のシェレンベルクらが初老期発症の遺伝性アルツハイマー病の大部分は、21番目という予想に反して14番目の染色体に乗っていることを決定的に明らかにした。
 また、初老期に発症する一部のものは、老人斑の核になっているβアミロイドの前駆体タンパク質(APP)を作る遺伝子の変異によること、65歳以上の老年期に発症するものは19番目の染色体とかなり関連があることなどが確認されている。遺伝子の異常については、21番目の染色体が1個多いために発症するダウン症候群との関連で論じられてきた。精神薄弱の一種であるダウン症では、40歳以上になると、β、タウタンパク質が蓄積するなど、アルツハイマー病と同じ状態になることが知られている。
 さて、最も気になる今後の展望については、どうか。前述の研究成果の外にも、APP遺伝子の変異で起こる家族性アルツハイマー病の一部では、βタンパク質の生産が高いことが判明している。それらのことから、βタンパク質をどの細胞が、どのように多く生産するかなどの研究が各国で進んでいるという。

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 わが国では、平均寿命の伸びや出生率の低下などにより、他国に類を見ない速さで人口の高齢化が進んでいます。そのため21世紀の初頭には、65歳以上の老年者が総人口の20%前後を占めると予想されています。
 こうしたなかで、各種の成人病や老人性疾患も近年急速に増加しています。高齢者の場合は、運動器(骨・関節など)の異常を訴えることが多いのですが、特に、膝や肘の関節に特有の変形や障害が現れる変形性関節症という老人性疾患は日本人に多く、今後さらに増加するものとみられます。
 変形性関節症は一種の老化現象ともいえますが、この病気のことをよく知って、若い時期から適切な配慮を行えば本格的な発症を防いだり、軽症化させることができます。

関節を動かし始める時に痛む

 変形性関節症は、膝や肘などの関節軟骨が磨耗し、軟骨の下の骨に棘状の突出ができたりするもので、ある程度進行すると関節が痛んだり、水が溜まったりします。放置しておくと、関節部の外形も変形し、運動障害が重くなります。
 比較的初期のうちは、関節を動かし始める時に痛みを感じるのが特徴で、動作を継続していると痛まなくなるか、痛みが軽くなるのが普通です。たいていは、冬季に痛みが出て、気候が暖かくなると症状が緩和または消失します。
 この病気の患者をレントゲンで調べると、関節部に骨棘(棘様の骨)の増殖と骨の硬化が認められます。こうした特徴が、変形性関節症という病名の由来になりました。
 ただし、骨棘の増殖や骨硬化などの変形は、いきなり発生するわけではありません。まず、関節部の軟骨の磨耗・変性が起こって骨と骨がぶつかり合うようになり、その影響で骨の変形が生じるのです。従って、関節部の軟骨の磨耗と変性が、この病気の本質といえます。

膝の靱帯や筋肉が弱いと発生しやすい

 関節部の軟骨は、年齢とともに磨耗しやすくなります。また軟骨に含まれる成分(コンドロイチン硫酸など)も、老化が進むと変質してきます。このため、老化が変形性関節症の最大の原因となりますが、それだけでなく、若いときに行ったスポーツの影響なども、重要な発症因子となります。
 変形が発生する部位は膝関節が主体で、1部肘関節にも見られます。膝の関節は、もともと骨の形が不安定で、靱帯と筋肉がそれをカバーしていますが、老化が進むと靱帯や筋肉が弱まり、軟骨の磨耗が進みやすくなります。特に、女性は靱帯と筋肉が弱いため、発生率が男性の3~4倍になります。
 肘の場合は、子供の時からスポーツや労働などで過度の負担をかけたりすると、中高年以降に発生しやすくなります。
 股関節や足関節(足首)などでも変形性関節症が起こることがありますが、これらの関節は膝関節よりも骨の構造の安定性がよいので、患者数は多くありません。また、変形性関節症と同様の現象が脊椎に起こることもあります。この場合は、変形性脊椎症と呼ばれます。

辛抱強く訓練すれば痛みが治まる

 変形性膝関節症の多くは、膝の内側の軟骨がはげて痛みが出ます。1度変形した軟骨は修復されませんが、薬を用いながら辛抱強く訓練していくと、軟骨の下の骨が次第に硬くなってきて、痛みが治まっていくのが普通です。
 病気が進行する原因のひとつに肥満があります。そのため、肥満者の場合は、治療のひとつとして食事療法による減量対策も重要です。
 また、内視鏡の1種である関節鏡(金属製の硬い内視鏡)を使った特殊な小手術を行って、はがれかかった軟骨を除去することもあります。膝の内側が磨耗して著しいO脚となっているような場合は、膝の内側の軟骨に一層負担がかかって変形が重症化しやすくなるため、膝の骨の1部を切除してO脚を治す手術を行うこともあります。さらに重症な人には、人工関節を埋め込むこともあります。
 ただし、こうしたケースは多くありません。変形性関節症の患者が比較的多い当院でも、O脚を治す手術は年間5~6例程度で、人工関節は年間1~2例程度です。
 従って変形性関節症では、薬物療法と訓練療法などを効果的に行って、時間をかけて上手に痛みを治めていくことが治療のポイントになります。

膝の大腿四頭筋を訓練することが大切

 変形性関節症の薬物療法は、消炎鎮痛剤が主体になります。補助的に湿布のような外用薬を併用するのもよいでしょう(冷湿布は痛みを誘発することもある)。また支柱のついた専用サポーターも痛みを軽減し、歩行を楽にする効果があります。
 訓練療法は、大腿四頭筋という膝の筋肉の血行を改善し、筋力を強化する特殊な体操が主体となります。大腿四頭筋は膝関節のすぐ上にある筋肉で、膝を伸ばす働きをします。この筋肉は膝の病気に関係することが多いのですが、しばらく使わないとすぐ萎縮して、歩行障害に陥ったりします。
 変形性関節症の場合は、膝関節を動かさずに大腿四頭筋を収縮させる「等尺性収縮体操」という体操を行います。この体操では、まず下肢を伸ばした状態で床上に寝るか座るなどして、大腿四頭筋の収縮と弛緩を繰り返します。このリズミカルな運動がポンプのような作用をして、膝の血行を改善し、腫れを軽減させたり、進行を防ぐ効果をもたらします。また筋肉の萎縮を防ぎ、筋力を強化する効果もあります。

少年期のスポーツは適度に行う

 日常生活では、正座やウサギ飛び、階段の昇降など、膝に負担をかける動作は極力避けるようにします。食生活では特別な注意はありませんが、栄養バランスに十分注意し、規則正しく食事をとることが大切です。肥満がある場合は、無理なくダイエットをして減量してください。入浴は、血行をよくする効果もあり、負担がかからない程度なら全く問題ありません。
 変形性関節症は、中年期までに膝の筋肉などを強化しておけば、ある程度予防することができます。膝の筋肉を強化するためには、足に1~2キロの重りをつけて椅子に座り、足を動かす方法もありますが、面倒ならば、前述の「等尺性収縮体操」を根気よく続けるだけでもよいでしょう。
 また、少年期のスポーツは無理をさせないことが大切です。特に、野球・テニス・柔道など、肘に負担がかかりやすい競技は、肘を酷使させないような配慮が必要です。

健康のブログ
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加齡にともない生理的機能が低下することを老化と呼んでいる。老化は避けることのできない生命現象である。老化は生理的老化と病的老化に分類され、病的な老化には遺伝的因子と環境的因子の影響が大きい。老化がなぜ起こるのかについては古くから研究されており、いくつかの学説が提唱されている。その中でも近年注目されているのは、フリーラジカル説と呼ばれるものである。生体内に発生したフリーラジカルが生体構成成分に酸化的損傷を与え、老化を引き起こすという説である。
 しかし、老化はひとつの説では説明できない点も多く、いくつかの説が関連していると言われている。運動や栄養が老化を遅らせることが可能かどうかは、非常に興味深い課題である。しかし、老化と寿命は混同できない問題である。生理的機能は運動によって高く維持される。また、疫学的な調査では運動選手の各年代における生存率が高いことが報告されている。実験動物では摂食量が生存率に影響していることもわかっている。

1 老化とは

 一般的に、老化とは成熟期以後にからだの恒常性や生理的機能が時間の経過とともに低下することである。老化には、1)有害性:老廃物の蓄積、2)進行性:非可逆的な進行、3)内存性:遺伝子による制御、4)普遍性:すべてのヒトにみられる現象、の四つの特徴がある。さらに、死亡率の増加、生体構成成分の低下、生体機能の低下、環境変化への適応能力の低下、疾病の増加なども老化の特徴である。

(1)老化に関する10の法則
1)死の確率は年齢とともに対数的に増加し、生体の機能に関する測定値は、時とともに直続的に低下する。
2)寿命は遺伝的素因と関係する。
3)雄は雌より寿命が短い。
4)寿命は食餌に影響される。
5)冷血動物の寿命は気温が上がると短縮し、下がると延長する。
6)致死量以下の放射線に暴露すると、寿命は短縮する。
7)年齢にともなう変化の度合いは、臓器系統によって異なる。
8)加齢とともに外からのストレスに対応する予備力の減少がみられる。
9)年齢的な変化は細胞内の化学的過程にみられる変化よりも、生体全体あるいは臓器単位のほうが顕著に認められる。
10)測定する生理機能が複雑であるほど、年齢による差異は著しい。

(2)老化の分類
 老化は生理的老化と病的老化に分類され、それぞれ分けて考える必要がある。生理的老化は疾病をともなわない老化であり、病的な老化は環境的因子(栄養、運動、ストレス、大気汚染など)や遺伝的因子(遺伝子的素因、遺伝子の損傷など)の影響による病的な状態をともなう老化である。
<生理的老化> 生理機能の進行的な低下、器官と組織の萎縮などの老化
<病的老化>  高血圧、動脈硬化、糖尿病、がん、白内障、骨粗鬆症、痴呆症など

2 加齡による生理的機能の変化

 加齡によって器官の重量が減少する。これは器官が構成する細胞が細胞死を起こして細胞数が減少するためと、細胞数は変化しないが細胞が萎縮するためである。脳の細胞は加齡とともに減少することが知られている。また、筋肉では筋細胞の萎縮がみられる。
 25~30歳をピークとして生理的機能は加齡にともなって低下していく。生命の維持に重要なはたらきをする神経系や細胞の内部環境は、機能低下の程度は小さいが、腎臓や呼吸循環器系の低下は大きい。老化による生理的機能の低下速度は器官によって異なる。また、全身持久力の指標である最大酸素摂取量も25歳をピークとした場合、加齡にともなって減少する。

3 老化学説

 老化がなぜ起こるかについては、いくつかの学説が唱えられている。


(1) プログラム説
 哺乳動物の脳には、あらかじめプログラムされた生物時計があり、神経伝達とホルモンの作用によって、細胞の活性化のスイッチと死に至る過程がすでに決定されている。

(2) エラー・カタストロフィー説
 細胞内でたんぱく質が合成される場合、複雑な過程でエラーが生じて異常なたんぱく質が合成される。このような異常なたんぱく質が多く合成されると、やがて正常な細胞機能が阻害することになる。

(3) 体細胞突然変異説
 DNAの損傷が完全に修復されないか、もしくは間違って修復されたために正しい遺伝情報が伝わらず、細胞が突然変異を起こし老化につながるという説である。

(4) クロスリンク説
 たんぱく質はペプチドと呼ばれる低分子から構成されているが、この分子間が架橋結合*(クロスリンク)することによって、本来のたんぱく質の構造と機能が変化する。たんぱく質である酵素やコラーゲン、DNAなどがクロスリンクすることによって老化するという説である。

(5) すり切れ説
 細胞が内部環境や外部環境の悪化に伴い消耗が加速され、やがて細胞機能が低下して細胞死に至る。

(6) フリーラジカル説
 不対電子を有する反応性の高い物質をフリーラジカルという。フリーラジカルには活性酸素を含み、特にヒドロキシルラジカル*(・OH)は強い反応性を示す。これらのフリーラジカルがDNA、RNA、酸素、たんぱく質、細胞膜の不飽和脂肪酸などに酸化的損傷を与えることによって、細胞死や細胞機能の低下が起こり老化につながるという説である。
 このほかにもいくつかの老化学説があるが、ひとつの学説ですべての複雑な老化過程を説明するのは困難である。老化は遺伝子の影響を受けて遺伝的に決定されていると考えられるが、生体内外の環境的因子に大きく影響される。

*ヒドロキシルラジカル
反応性が最も強いラジカルである。H2O2とFe2+またはH2O2とO2-・(スーパーオキサイド)が反応すると生成される。

*架橋結合
たんぱく質の分子内または分子間で、ジスルフィド結合(S-S結合)などが形成されること。ジスルフィド結合では、たんぱく質の反応性に富むSH基(チオール基)が酸化されることによって生じる。

4 老化と運動

(1) 生理的機能の低下と運動
 ほとんどの生理的機能は加齡にともない低下する。しかし、生理的機能の中には、継続的な運動によって加齡による低下が抑制されることも認められている。呼吸循環器機能の一つとしての最大酸素摂取量は、加齡にともない直線的に減少するが、トレーニングを行っているランナーやジョガーは初期のレベルが高く、高齢になっても非トレーニング者よりも高いレベルを維持している。また、からだの維持や活動に最も大切な骨は、定期的な運動によって骨密度の減少が抑制され、同年代の一般人と比べても高い骨密度を示している。骨格筋では機能と構造が加齡によって低下する。

(2)寿命と運動
 運動選手は短命であると言われるが、必ずしも寿命が短いとは限らない。むしろ運動の実践が生存率を上げる報告もある。フィンランドのトップアスリートの縦断的な調査では、一般人に比べてスポーツ選手の生存率が高いことが示されている。特に、持久的なスポーツ選手において生存率が高いようである。しかし、寿命はほとんど変わっていない。
 運動ではからだの総酸素消費量が増加するために、酸素代謝が高まり、老化を促進し寿命を短くするという説がある。哺乳動物の種によって単位体重当りの発熱量(比代謝率:キロカロリー/kg体重/日)が異なり、比代謝率が大きいほど短命であることが示されている。この結果は、異なる種における比代謝率と寿命の関係を示したもので、必ずしも運動による酸素代謝の促進が寿命を短くするとは限らない。すべての動物種の最大寿命は種によって特有であり一定している。実際、酸素代謝が高まれば、からだの中で発生する活性酸素やフリーラジカルが増加して、細胞に酸化的ストレスが加わり老化を促進するかもしれない(老化のフリーラジカル説)。しかし、寿命に影響するかどうかは明らかではない。
 運動が生存率を高め寿命を延長するという動物実験の結果がある。狭いケージで飼育されたラットと回転輪が付いたケージで自由に運動ができるように飼育されたラットでは、自由運動ができるラットの方が生存率が高く、寿命も延長している。このように運動によって酸素代謝が促進する条件においても、寿命の延長が確認されている。

5 老化と栄養

(1) 生存率と栄養
 病的な状態にならない条件で食餌摂取量を制限すると、寿命が延長することが古くから知られている。食餌摂取量を自由摂取ラットの47~65%に制限した制限食ラットでは、12~24月齡の体重が自由食ラットの約55%に抑制されて、生存率は自由食ラットよりも顕著に高かった。また、平均寿命は24.8%も延長した。さらに、実験動物で自由摂取群の60%で飼育した場合、寿命が30~50%延長した報告もある。なぜ食餌制限によって老化が遅延して、寿命が延長するのかについては明らかではないが、発がん率の低下や免疫機能低下の抑制、DNA損傷の低下などが報告されている。
 さらに、食餌制限の時期と生存率の関係が報告されている。マウスの飼育1年目と2年目で食餌量を変えた場合、最も生存率が高く寿命も延びたのは1年目に食餌制限を行い、2年目には自由摂食としたグループであった。逆に生存率も寿命も低かったのは2年間とも自由摂食のグループであった。このことにより老化の抑制や寿命の延長には、食餌量と摂食パターンが関係することが推察される。さらに運動と体重との関係では、運動ラットと体重が同じになるように食餌量を制限したラットが、自由摂食ラットより約20%寿命が延びた。食餌量は最も少なかった。自発運動ラットが次に生存率が高く、自由摂食ラットおよび運動ラットと食餌量を同じにしたラット(運動ラットの体重より約25%増加)は最も低かった。これらの結果がヒトにあてはまるかどうかは疑問であるが、過食による肥満が成人病の誘因となることから、摂取量が老化や寿命に与える影響は大きいと考えられる。

(2) 抗酸化栄養素と老化
 老化や疾病にフリーラジカルが関与していることが知られているなかで、たんぱく質、脂質、DNAの酸化的損傷を防御する抗酸化物質のはたらきが注目されている。栄養素として摂取するビタミンE、C、A、β-カロチン*などは代表的な抗酸化栄養素である。これらの抗酸化栄養素が活性酸素やフリーラジカルを消去することによって、老化を抑制できるかどうかは明らかではない。動物実験ではビタミンEを投与しても生存率と寿命には影響を及ぼさないようである。特定の抗酸化栄養素を過剰に摂取した場合、細胞内のほかの抗酸化栄養素とのバランスが崩れて、細胞全体としての抗酸化能力が発揮できないのかもしれない。しかし、抗酸化栄養素が活性酸素やフリーラジカルによる細胞機能の低下やDNAの損傷を抑制することにより、バランスのとれた抗酸化栄養素の摂取は、老化による疾病を予防できるか、もしくは疾病の発症を遅延させることができると考えられる。

*β-カロチン
β-カロチンは自然界に存在する黄、橙色などを呈する色素(カロチノイド)の一種である。体内で自然界に存在するビタミンAが不足すると必要量だけ変換される。β-カロチンは抗酸化物質として一重項酸素の消去作用を示し、発がんを抑制する効果も報告されている。

II 老化の社会学-高齢者の意識と行動-


総務庁老人対策室

 高齢者の人たちの意識と行動はどうなっているのであろうか。高齢者が可能な限り住みなれた家庭や地域で安心して充実した生活を送ることが理想であるが、現実はどうなっているのであろうか。総務庁老人対策室の実施した「高齢者の一人暮らし・夫婦世帯に関する調査結果」から伺ってみよう。

1 生活上の心配ごとに関する事項

(1) 高齢期に大切なもの
 「高齢期に大切なものは何だと思うか」についてみると、「健康」が95.0%と最も多く、次いで「家族」57.9%、「友人」29.2%、「所得・財産」27.8%、「趣味」25.4%、「仕事」14.7%の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らし、夫婦世帯共に「健康」、「家族」の順となっているが、その次に一人暮らしでは「友人」を挙げる者が多く、夫婦二人世帯では「所得・財産」を挙げる者が多くなっている。
 都市規模別にみると、町村で「友人」の割合が高く、「所得・財産」の割合が低くなっている。また、小都市で「趣味」を挙げる者の割合が低くなっている。
 性別にみると、「仕事」(男性19.8%、女性11.7%)、「家族」(男性62.1%、女性55.3%)は男性の方が、「友人」(男性21.3%、女性34.1%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「所得・財産」の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が3年~5年未満の者で「仕事」の割合が低く、「所得・財産」の割合が高くなっている。また、一人暮らしの期間が20年以上の者で「家族」の割合が低くなっている。
 夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が3年~5年未満の者で「所得・財産」の割合が高く、20年以上の者で「仕事」の割合が低くなっている。

(2) 高齢期の心構え
 「高齢期の生活の心構えとして、どのようなものがよいと思うか」についてみると、「気持ちを若々しく保つ」が44.2%と最も多く、次いで「年相応に過ごす」25.0%、「自分の考えで主体的に生きる」15.6%、「家族などの周りの人にあわせる」11.5%の順となっている。
 同居形態別にみると、「自分の考えで主体的に生きる」(一人暮らし20.2%、夫婦世帯13.0%)は一人暮らしで割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、都市規模が大きくなるほど「自分の考えで主体的に生きる」の割合が高く、逆に都市規模が小さくなるほど「家族など周りの人にあわせる」の割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、60~64歳で「気持ちを若々しく保つ」の割合が高く、「年相応に過ごす」、「自分の考えで主体的に生きる」の割合が低くなっている。
 一人暮らしに歴別にみると、一人暮らしの期間が20年以上の者で「家族などの周りの人にあわせる」の割合が低くなっている。
 夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が3年~5年未満の者で「気持ちを若々しく保つ」の割合が高く、「自分の考えで主体的に生きる」の割合が低くなっている。また、夫婦暮らしの期間が10年以上の者で「年相応に過ごす」の割合が高くなっている。

(3) 高齢社会のイメージ
 「今後の高齢者の多い社会についてどのように考えるか」についてみると、「明るい社会」が26.5%と最も多く、次いで「どちらかといえば明るい社会」23.4%、「どちらともいえない」22.7%、「どちらかといえば暗い社会」16.8%、「わからない」6.5%、「暗い社会」4.1%の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「明るい社会」(28.1%)を挙げる者が最も多く、次いで「どちらともいえない」(26.7%)、「どちらかといえば明るい社会」(18.3%)等の順となっており、夫婦世帯では「どちらかといえば明るい社会」(26.2%)を挙げる者が最も多く、次いで「明るい社会」(25.6%)、「どちらともいえない」(20.5%)等の順となっている。
 都市規模別にみると、小都市で「明るい社会」、「どちらかといえば明るい社会」の割合が低く、「どちらかといえば暗い社会」、「暗い社会」の割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、60~64歳で「どちらかといえば暗い社会」の割合が高く、65~69歳で「どちらかといえば明るい社会」の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が3年未満ので「明るい社会」、「どちらかといえば明るい社会」の割合が高く、5年~10年未満の者で「明るい社会」の割合が低くなっている。
 夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が3年~5年未満の者で「どちらかといえば明るい社会」の割合が低く、「どちらかといえば暗い社会」の割合が高くなっている。

(4) 近所づきあい
 「近所の方とどの程度つきあいをしているか」についてみると、「お互いに訪問しあう人がいる」50.0%、「立ち話をする程度の人がいる」26.7%、「あいさつをする程度の人がいる」19.8%、「つきあいはない」3.5%の順となっている。
 同居形態別にみると、「立ち話をする程度の人がいる」(一人暮らし22.7%、夫婦世帯28.9%)は夫婦世帯の方が割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、都市規模が小さくなるほど「お互いに訪問しあう人がいる」の割合が高くなり、逆に都市規模が大きくなるほど「立ち話をする程度の人がいる」、「あいさつをする程度の人がいる」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「お互いに訪問しあう人がいる」(男性43.1%、女性54.2%)は女性の方が、「あいさつをする程度の人がいる」(男性25.3%、女性16.4%)は男性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「立ち話をする程度の人がいる」の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が短くなるほど「お互いに訪問しあう人がいる」の割合が高くなっている。
 夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が20年以上の者で「立ち話をする程度の人がいる」の割合が低くなっている。
 住まいの種類別にみると、「お互いに訪問しあう人がいる」は持家、一戸建てで割合が高く、「あいさつをする程度の人がいる」は借家、集合住宅で割合が高くなっている。
 住居年数別にみると、住居年数が長くなるほど「お互いに訪問しあう人がいる」の割合が高くなっている。

(5) 社会とのかかわり
 「教養・文化、スポーツ、社会奉仕などの分野で、同好会、サークルの活動や種々の行事、催し物への参加を通じて、社会とのかかわりを持って生活したいと思うか」についてみると、「そう思う」が47.3%と最も多く、次いで「どちらかといえばそう思う」25.7%、「そうは思わない」13.6%、「どちらかといえばそうは思わない」9.0%の順となっている。
 同居形態別にみると、「そう思う」(一人暮らし42.9%、夫婦世帯49.7%)は夫婦世帯の方が、「そうは思わない」(一人暮らし16.4%、夫婦世帯12.0%)は一人暮らしの方が割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、都市規模が小さくなるほど「そう思う」の割合が高くなり、都市規模が大きくなるほど「そうは思わない」の割合が高くなっている。
年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「そう思う」の割合が高くなっている。
高齢社会のイメージ別にみると、明るい社会と答えた者で「そう思う」の割合が高くなっている。
 近所づきあい別にみると、近所づきあいの程度が深くなるほど「そう思う」の割合が高く、「そうは思わない」の割合が低くなっている。

(6) 子供との同居意識
 「高齢者が、子供や子供夫婦と暮らすことについて、どう思うか」についてみると、「できれば一緒に暮らす方がよい」が31.3%と最も多く、次いで「できれば別々に暮らす方がよい」20.0%、「別々に暮らす方がよい」20.0%、「一緒に暮らす方がよい」17.8%、「どちらともいえない」7.8%の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らし、夫婦世帯共に「できれば一緒に暮らす方がよい」が最も多く、次いで一人暮らしでは「別々に暮らす方がよい」、「できれば別々に暮らす方がよい」の順となっているのに対して、夫婦世帯では「できれば別々に暮らす方がよい」、「別々に暮らす方がよい」の順となっている。都市規模別にみると、都市規模が小さくなるほど「一緒に暮らす方がよい」、「できれば一緒に暮らす方がよい」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「一緒に暮らす方がよい」、「できれば一緒に暮らす方がよい」は男性の方が、「できれば別々に暮らす方がよい」、「別々に暮らす方がよい」は女性の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が3年未満の者で「一緒に暮らす方がよい」の割合がやや高くなっている。
夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が3年~5年の者で「一緒に暮らす方がよい」の割合がやや高くなっている。

(7) 日常生活での心配ごと
 「日常生活の中で心配していることは何か」についてみると、「自分や配偶者が病気がちになること」が33.0%、「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」24.7%、「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」17.9%、「配偶者に先立たれた後の生活のこと」14.7%、「火事・災害のこと」14.6%等の順となっており、「心配ごとはない」が36.0%と最も多くなっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」が最も多く、次いで「火事・災害のこと」、「自分や配偶者が病気がちになること」、「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」等の順になっているのに対し、夫婦世帯では「自分や配偶者が病気がちになること」が最も多く、次いで「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」、「配偶者に先立たれた後の生活のこと」、「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」等の順になっている。
 性別にみると、「自分や配偶者が病気がちになること」(男性39.5%、女性29.1%)、「配偶者に先立たれた後の生活のこと」(男性21.8%、女性10.4%)は男性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、60~64歳で「自分や配偶者が病気がちになること」、「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」、「配偶者に先立たれた後の生活のこと」の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が20年以上の者で「心配ごとはない」の割合が低く、「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」の割合が高くなっている。夫婦世帯にみると、夫婦暮らしの期間が3年未満の者で「心配ごとはない」の割合が低く、「自分や配偶者が病気がちになること」、「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」の割合が高くなっている。

(8) 心配ごとの相談相手
 「心配ごとや悩みごとができた場合、誰に話を聞いてもらったり、相談しているか」についてみると、「子供」が61.5%と最も多く、次いで「配偶者」51.1%、「兄弟姉妹」21.3%、「友人・知人」15.5%、「となり近所の人」7.1%、「子供の配偶者」6.4%等の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「子供」が58.2%で最も多く、次いで「兄弟姉妹」、「知人・友人」等の順となっており、夫婦世帯では「配偶者」が80.2%と最も多く、次いで「子供」、「兄弟姉妹」等の順となっている。
 都市規模別にみると、都市規模が小さくなるほど「子供」の割合が高くなっている。また、町村で「となり近所の人」を挙げる者が多くなっている。
 性別にみると、「配偶者」(男性69.9%、女性40.3%)は男性の方が、「友人・知人」(男性8.8%、女性19.6%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「配偶者」、「友人・知人」の割合が高くなっている。
 一人暮らし歴別にみると、一人暮らしの期間が20年以上の者で「相談したりする人はいない」の割合が高くなっている。
 夫婦世帯歴別にみると、夫婦暮らしの期間が3年~5年未満の者で「兄弟姉妹」の割合が高くなっている。

2 生計に関する事項

 (1) 1カ月当たりの生活費
 「家賃などを含めた一カ月当たりの生活費はおおむねどのくらいか」についてみると、「20~25万円未満」が23.7%と最も多く、次いで「10~15万円未満」22.0%、「15~20万円未満」19.6%、「25万円以上」18.6%、「5~10万円未満」10.3%、「5万円未満」1.0%の順となっている。

(2) 主な収入源
 「現在の生活費をまかなっている、主な収入源は何か」についてみると、「公的な年金(国民年金、原生年金など)」が91.5%と最も多く、次いで就業による収入」28.2%、「預貯金の引出し」15.1%、「恩給」8.0%、「子供などからの援助」7.2%、「家賃、地代などの収入」6.1%等の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしで「預貯金の引出し」、「子供などからの援助」の割合が高く、夫婦世帯で「就業による収入」の割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、小都市、町村で「就業による収入」の割合が高く、大都市、中都市で「家賃、地代などの収入」の割合が高くなっている。また、町村で恩給の割合が高くなっている。
 性別にみると、「就業による収入」(男性32.7%、女性25.4%)、「私的な年金(企業年金、個人年金など)」(男性6.0%、女性3.2%)は男性の方が、「子供などからの援助」(男性5.3%、女性8.3%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「就業による収入」の割合が高くなり、逆に年齢が高くなるほど「子供からの援助」の割合が高くなっている。
 健康状態別にみると、健康状態が良い者ほど「就業による収入」の割合が高くなっている。

(3) 高齢者の就労意識
 「何歳くらいまで働くのがよいと思うか」についてみると、「元気ならいつまでも働く方がよい」が35.4%と最も多く、次いで「65歳くらいまで」25.3%、「70歳くらいまで」22.7%、「60歳くらいまで」7.9%、「75歳くらいまで」5.6%の順となっている。
 同居形態別にみると、「70歳くらいまで」とする者は夫婦世帯の方が、「元気ならいつまでも働く方がよい」とする者は一人暮らしの方が割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、大都市で「70歳くらいまで」とする者の割合が高く、「元気ならいつまでも働く方がよい」とする者の割合が低くなっている。
 性別にみると、「元気ならいつまでも働く方がよい」(男性32.7%、女性37.0%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、70~74歳で「70歳くらいまで」の割合が低く、「75歳くらいまで」の割合が高くなっている。

3 健康に関する事項

(1) 身体上の不自由
 「日常生活を送る上で、どのようなときに身体上の不自由を感じるか」についてみると、「歩行」13.5%、「新聞、雑誌を読むとき」6.5%、「食事」3.5%等の順となっており、「不自由は感じない」が76.8%と最も多くなっている。
 同居形態別にみると、一人暮らし、夫婦世帯共に不自由を感じる内容としては「歩行」、「新聞、雑誌を読むとき」の割合が高くなっており、「不自由は感じない」が7割を超している。
 都市規模別にみると、町村で不自由を感じる各項目の割合が高く、「不自由は感じない」の割合が低くなっている。また、町村で「食事」の割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が高くなるほど不自由を感じる各項目の割合が高く、「不自由は感じない」の割合が低くなっている。
 健康状態別にみると、健康状態が不良になるほど「不自由は感じない」の割合が低くなり、不自由を感じる各項目の割合が高くなっている。

(2) 病院や診療所への通院の頻度
 「現在、病気の治療のために病院や診療所にどの程度通院しているか」についてみると、「月に2~3日程度」28.0%、「月に1日」18.0%、「週に1日」9.7%、「週に2~3日程度」7.5%等の順となっており、「通院していない」が28.5%と最も多くなっている。

(3) 入院の有無
 「この1年間に入院していたことがあるか」についてみると、「1ヵ月未満」6.7%、「1~3ヵ月未満」4.1%、「3~6ヵ月未満」1.6%、「1年以上」1.0%、「6~12ヵ月未満」0.3%の順となっており、「入院したことはない」が86.4%と大半を占めている。

(4) 健康の維持増進
 「自分の健康の維持増進について、気をつけていることは何か」についてみると、「休養や睡眠を十分にとる」が55.1%と最も多く、次いで「栄養のバランスのとれた食事をする」54.8%、「規則正しい生活を送る」49.2%、「散歩やスポーツなどの運動をする」26.5%、「健康診査などを定期的に受ける」24.6%、「気持ちをなるべく明るく持つ」22.4%等の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「栄養のバランスのとれた食事をする」(55.5%)が最も多く、夫婦世帯では「休養や睡眠を十分にとる」(55.2%)が最も多くなっている。性別にみると、男性は「休養や睡眠を十分にとる」が最も多く、次いで「規則正しい生活を送る」、「栄養のバランスのとれた食事をする」の順となっており、女性は「栄養のバランスのとれた食事をする」が最も多く、次いで「休養や睡眠を十分にとる」、「規則正しい生活を送る」の順となっている。
 年齢階級別にみると、60~64歳で「栄養のバランスのとれた食事をする」、「気持ちをなるべく明るく持つ」の割合が高くなっている。

(5) 知りたい健康情報
 「高齢者の健康管理について、知りたいことはなにか」についてみると、「老人性痴呆症について」が26.9%と最も多く、次いで「食生活のあり方について」26.7%、「寝たきりの予防方法について」23.6%、「がんや高血圧について」23.1%、「健康増進のための運動方法について」23.0%等の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「老人性痴呆症について」が最も多く、次いで「食生活のあり方について」、「寝たきりの予防方法について」の順となっており、夫婦世帯では「食生活のあり方について」が最も多く、次いで「老人性痴呆症について」、「がんや高血圧について」の順となっている。
 都市規模別にみると、町村で「食生活のあり方について」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「健康増進のための運動方法について」(男性26.8%、女性20.7%)、「がんや高血圧について」(男性26.4%、女性21.1%)は男性の方が、「骨粗鬆症について」(男性5.8%、女性18.0%)、「寝たきりの予防方法について」(男性20.6%、女性25.4%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「食生活のあり方について」、「がんや高血圧について」、「骨粗鬆症について」「介護の方法について」等の割合が高くなっている。

4 福祉に関する事項

(1) 緊急時の連絡先
 「けがや病気など、緊急の人の手助けを必要とする場合に誰に連絡するか」についてみると、「子供」が76.4%と最も多く、次いで「配偶者」49.8%、「兄弟姉妹」23.6%、「となり近所の人」17.7%、「子供の配偶者」12.9%、「かかりつけの医師」11.9%等の順となっている。
 同居形態別にみると、夫婦世帯では「子供」と「配偶者」の割合が高く、それ以外の項目を挙げる者の割合が低くなっている。
 都市規模別にみると、大都市で「友人・知人」の割合が高く、町村で「となり近所の人」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「配偶者」(男性70.8%、女性37.0%)は男性の方が、「友人・知人」(男性6.0%、女性12.1%)、「となり近所の人」(男性14.2%、女性19.8%)は女性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、年齢が低くなるほど「配偶者」の割合が高くなっている。また、60~64歳で「子供」の割合が高くなっている。

(2) 介護状態への不安度
 「将来寝たきりや老人性痴呆症になり、介護が必要な状態になるのではないかと不安になったりすることがあるか」についてみると、「ときどきある」が35.3%と最も多く、次いで「あまりない」28.2%、「全くない」19.6%、「よくある」14.6%の順となっている。
 同居形態別にみると、「よくある」、「ときどきある」は一人暮らしの方が「あまりない」「全くない」は夫婦世帯の方が割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、町村で「よくある」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「よくある」、「ときどきある」は女性の方が、「あまりない」「全くない」は男性の方が割合が高くなっている。
 年齢階級別にみると、75歳以上で「よくある」の割合が高くなっている。
 健康状態別にみると、健康状態が不良になるほど「よくある」の割合が高くなっている。

(3) 介護を受けたい場所
 「身体が虚弱になって、日常生活を送る上で介護を必要とするようになった場合、どこで介護を受けたいか」についてみると、「現在の自宅で介護してほしい」が41.8%と最も多く、次いで「病院などの医療機関に入院したい」27.1%、「老人ホームなどの福祉施設に入所したい」11.7%、「子供の家で介護してほしい」6.7%等の順となっている。
 同居形態別にみると、「現在の自宅で介護してほしい」は夫婦世帯の方が、「老人ホームなどの福祉施設に入所したい」、「病院などの医療機関に入院したい」は一人暮らしの方が割合が高くなっている。
 都市規模別にみると、小都市で「現在の自宅で介護してほしい」の割合が高く、「病院などの医療機関に入院したい」の割合が低くなっている。
 性別にみると、「現在の自宅で介護してほしい」(男性53.9%、女性34.5%)は男性の方が、「子供の家で介護してほしい」(男性4.4%、女性8.1%)、「病院などの医療機関に入院したい」(男性20.2%、女性31.4%)は女性の方が割合が高くなっている。

(4) 介護を頼む人((3)で「現在の自宅」、「子供の家」、「兄弟姉妹など親族の家」で介護してほしいと回答した者に)
 「現在の自宅、子供の家又は兄弟姉妹など親族の家では、誰に介護を頼むつもりか」についてみると、「子供」が72.9%と最も多く、次いで「配偶者」57.4%、「子供の配偶者」29.7%、「ホームヘルパー」16.5%、「兄弟姉妹」8.9%、「訪問看護婦」7.9%等の順となっている。
 同居形態別にみると、一人暮らしでは「子供」が最も多く、次いで「子供の配偶者」「ホームヘルパー」、「兄弟姉妹」の順となっており、夫婦世帯では「配偶者」が最も多く、次いで「子供」、「子供の配偶者」、「ホームヘルパー」の順となっている。
 都市規模別にみると、小都市、町村で「子供」が、大都市、中都市で「ホームヘルパー」の割合がそれぞれ高くなっている。また、大都市で「訪問看護婦」、「民間のシルバーサービス」の割合が高くなっている。
 性別にみると、「配偶者」(男性80.9%、女性38.1%)は男性の方が、「兄弟姉妹」(男性5.8%、女性11.4%)、「ホームヘルパー」(男性14.2%、女性18.5%)、「訪問看護婦」(男性5.2%、女性10.2%)は女性の方が割合が高くなっている。

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高齢者の多くは、わが家で家族と共に暮らすことを望んでいるといいます。何事もなく過ごせればそれは理想的なのですが、病状の急変や思わぬアクシデントが起こったときが問題です。高齢者と生活を共にする場合は、日ごろからとっさの対応、応急処置などを身につけておかなければいけません。

日ごろから心がけておくこと

 高齢者は、病気の場合はもちろん、元気なようでも急に異常を起こしたり、思いがけないケガをしたりすることがあります。特に問題なく過ごしている場合でも、次のようなことを心得ておきましょう。
1毎日、よく観察しておくこと。
 顔色、動作、食欲、排せつの状態など日常生活で変わった点はないか、日ごろから注意します。突然の発病や病変のように見えても、それ以前になんらかのシグナルを出している場合が少なくないからです。しかし、高齢者の場合はこのシグナルが見えにくく、本人の訴えもないことがあるので気をつけてください。
2定期的に受診しておくこと。
 主治医を決め、定期的な診察を受けるようにします。子供や高齢者がいる家庭では近くにホームドクターがいないと不安です。日ごろの観察ポイントから、いざという時の注意などまで指示を受けておくとよいでしょう。
6緊急連絡用の電話一覧をわかりやすい場所に。
 ホームドクターの電話をはじめ、連絡すべきところの電話番号を見やすく書いて、だれにでも分かる場所に張っておきましょう。家族の少ない家庭では近所にお互い助け合える家庭を作っておくと安心です。また、高齢者も連絡ができるようにこの一覧表について話しておきます。119番への連絡法も住所や目印など、伝えるべきことと順序を個条書きにしておきます。慌てると簡単なことも話せなくなるものですから。

主な症状別の対処法

 救急患者にとっては最初の5分間が生命を救う分かれ道になるといいます。それには症状の正しいチェックが鍵です。チェック・ポイントは、1意識の有無 2呼吸の有無 6脈拍の有無で、これをバイタルサイン(生の兆候)といいます。高齢者の場合は、脳卒中などで倒れることが少なくないので、一刻も早く医師の診察をうけることが必要ですが、基本的な応急処置は心得ておきたいものです。以下を参考にし、さらに専門家の指導を受けておくことをお勧めします。
●突然倒れたら
 安静にさせることが大切ですが、必要に応じていくつかの応急処置を施します。意識がない場合は特に慎重に対処しなければいけません。一人で動かしたり、頭が揺れるような状態には絶対にしないでください。意識がある場合は安全な場所に移してもよいでしょう。本人の不安を静めるよう、優しく声をかけながら医師の手配を素早くします。意識がはっきりしない場合は、 1吐瀉物が詰まって窒息を起こすのを防ぐため横向きにする。 2ケイレンしていたら、舌をかまないようにタオルなどを口の中に入れる。 6吐いたときは、飲み込まないように吸引器で吸い出すか、割り箸にガーゼを巻いた物で取り除く。

●呼吸が止まっていたら
 まず、気道の確保といって空気が肺まで通るように気道を開かせます。気道の確保で自然呼吸が始まらないときは人工呼吸をします。
 1気道の確保は、片手を首の下に当てて軽く持ち上げ、もう一方の手を額に当てて押し、あごを上げる。 2人工呼吸は額に当てた手をずらして鼻をつまみ、大きく息を吸い込み、高齢者の口を完全にふさぐようにして息を吹き込む。 6胸の動きを見ながら4回立て続けに行い、心臓の鼓動と呼吸をチェックする。あとは1分間に12回くらいのペースで行う。

●心臓が止まったら
 心臓が止まってしまったら、のどぼとけの脇で拍動を確認してから直ちに心臓マッサージを行います。心臓が動いているうちに行うと逆に危険を招くことがあります。人工呼吸と心臓マッサージを交互に行うか、2人で同時に行うのも有効です。
 1心臓が止まって1分以内なら、胸骨(胸中央の縦に長い骨)の中央部を握りこぶしで1回だけ強くたたく(前胸部強打法)。何回もたたいてはいけない。 2前胸部強打法で心拍が戻らない場合は、胸骨の下端3~4センチ上方に片方の手のひらの根元を置き、その上にもう一方の手を重ねる。 6ひじを伸ばして垂直方向に押してはゆるめる。肋骨が3~4センチ沈むくらいに押し、1秒間1回のペースで行う。

けがや事故が起こったら

 高齢者に起こりがちなトラブルへの対応を心得ておきましょう。ただし、トラブルはこの他にもいつ、どんな形で起こるかわかりません。専門家の指導を受けておくととっさの場合慌てずにすみます。
●食べ物や異物がのどに詰まったら
 1前かがみにさせ、肩甲骨の間を強くたたく。 2横を向かせ、舌を押さえながら指を入れて吐かせる。 6 1、2でだめな場合や意識がないときは高齢者の後ろに回り、足を開いて中腰になり、みぞおちよりやや下の腹部に両手を回す。 4腰を入れて、両手に力を入れて腹部を強く押し上げるようにし、同時にからだを引っ張り上げる。

●たんが詰まったら
 うつぶせにして背中を下から上に向かってたたく。うつぶせにできないときは横向きにして背中を下から上にたたく。
●やけどをしたら
 狭い範囲のやけどの場合は患部の少し上から流水で冷やす。患部に水を直接当てると皮膚がむけてしまうことがあるので注意する。広い範囲の場合は、とりあえず衣服の上からシャワーなどで冷やすが、一刻も早く病院に運ぶ。衣服は無理にぬがさないこと。
●骨折をしたら
 骨折をしたら、なるべく動かさないようにして添え木で骨折部位と関節を固定します。背骨の骨折は非常に危険なので慎重に処置をしますが、適切な処置ができない場合は動かさず、大至急、救急車や専門家を呼びます。いずれの場合も応急処置後、医師の診察は必要です。

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