老人性痴ほうをめぐる先端医学

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痴ほうは、60歳代後半から年齢を重ねるとともに増加し、85歳を超えると5人に一人がなるといわれています。社会の高齢化が進むにしたがって、日本の痴ほう患者の数もどんどん増えています。人間いつかは死にますが、痴ほうで最期を迎えることは、できれば避けたいものです。壊れてしまった脳神経細胞を復活させることは難しいでしょうが、老年神経病学の研究と臨床に詳しい、小川紀雄岡山大学医学部教授は「最近の痴ほうに関する研究や新薬の開発などで、症状を改善したり、発症を予防したり、病気の進行を抑えたりすることに期待が持てるようになりつつあります」と指摘しています。痴ほう研究の新しい成果などを紹介して、痴ほう予防のヒントを考えてみました。

1. 良性健忘と悪性健忘は違う

 中年を過ぎると、「ええと、あの背の高い、少し髪の薄い、あいつ何て言ったっけなあ」と知人の名前を「ど忘れ」してしまうことがよく起きます。「夕食時のビールがないなあ」と、近くのコンビニに行って、面白そうな週刊誌が目に留まって週刊誌を購入、肝心のビールは買わずに帰宅してしまう、なんてことも時々あります。でも、「ああ、おれもぼけたかなあ」なんて心配しているうちは問題ありません。これらは良性健忘と呼ばれ、病的な悪性健忘とは区別されています。
 悪性健忘の場合は、自分が忘れたという事実そのものを覚えていないし、もちろん反省することもしません。痴ほうの中核症状は悪性健忘を主体とした知的機能の低下で、周辺症状としては、異常行動、はいかい、幻想、妄想、情緒障害、うつ、意欲減退などがありますが、そのなかに「ど忘れ」はありません。

2. 老人性痴ほうは神経細胞が死ぬ病気

 老人性痴ほうを引き起こす病気としては、脳血管性痴ほうとアルツハイマー病の2つが大部分を占めます。欧米ではアルツハイマー病の方が脳血管性痴ほうより多いとされていますが、日本では逆に、脳血管性痴ほうの方が多いようです。これらの病気では脳の神経細胞が死に、脳内に隙間ができます。神経細胞は皮膚や血管、肝臓などの細胞と違って再生しない細胞ですので、死んだらもう元には戻りません。そういう意味では、痴ほうを治す薬はまだありません。それでも、周辺症状を改善する薬は次々と開発されており、介護をしている人たちにとっても大きな助けとなっています。なお、老人性痴ほうではありませんが、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、脳腫瘍、AIDS脳症など、手術や薬で治療可能な痴ほうもあるので気を付けてください。また、薬の副作用で痴ほうに似た症状が出ることもあります。
 脳神経細胞が脱落するに従って脳の重量そのものも減少します。小川教授は「90歳の人の肝臓の重さが30歳の時の半分であることと比べると、脳の重量減は10数%と少なく、脳は老化による委縮が少ない臓器です。でも、記憶や判断など知的機能をつかさどる、大脳皮質の神経細胞の数そのものは重量以上に減少しています」と言っています。脳は、その重量が体重の2.5%しかないにもかかわらず、脳の代謝はからだ全体の代謝の20~24%も占めています。つまり、脳は非常に大量のエネルギーを消費する器官なのです。でも、年をとれば脳機能が低下して、代謝も低下、血流も減少します。小川教授は「脳血管性痴ほう患者で脳血流量が少ない人は予後が悪いです。一方、アルツハイマー病ではこのような関連はあまりありません」と話しています。


3. 神経の間隙がポイント

 痴ほうのメカニズムを説明する前に、神経のことを説明しておく必要があります。例えば、熱い物をさわったとします。すると、その熱による刺激は、最終的には脳に伝えられるのですが、その間、その信号はたくさんの神経細胞をバケツリレーのようにして伝わります。1つの細胞内で刺激は電気信号という形で伝わりますが、神経と神経の間には隙間があるので、そこで電気信号は一時、化学物質による化学信号に置き換えられて、次の神経細胞に伝えられるのです。この間隙をシナプスといい、寸法はだいたい10万分の2~3mmです。この化学物質を神経伝達物質といい、神経伝達物質を受け取る次の細胞の受付にあたる部分を受容体といいます。
 痴ほうの問題の多くは、このシナプス周辺の異常で起こっています。火事現場で必死に脱出している時に指先に火傷するほど熱い物が触れても何も感じませんが、暗闇の中をおそるおそる手探りで進んでいる時、指先にちょっとでも熱いものが触れれば、びっくりします。つまり、同じ刺激でもからだの反応は学習で変化したり、その時の状況で変化したりします。これが、同じ刺激に対しては同じ反応しかしないパソコンや家電製品の電気信号伝達システムとまったく違うところです。電気製品だったら一カ所断線してしまうと機能は完全に停止してしまいますが、脳は細胞同士はお互いに完全に結合しないで、大きなネットワークを作って信号を伝達しているので、ひとつの細胞が死んでも、他の残っている細胞でうまくカバーできるということです。たとえ脳梗塞などで脳のネットワークの一部が壊れてからだの一部がまひしても、残ったネットワークを使って壊れた部分を回避する新しい回路を作ればいいのです。リハビリは、その新しいネットワークを形成するための学習ということです。

4. 脳血管性痴ほうは血管が原因

 脳血管性痴ほうは、高血圧や動脈硬化などが原因で脳内の血管が破れたり(脳出血)、血栓や塞栓で血管が詰まったり(脳梗塞)して、脳の神経細胞に酸素や栄養が供給されなくなって細胞が死んでしまうことから起きます。脳のどこの部分が傷害されるかで症状が変わるため、症状に決まったパターンがありません。小川教授は「脳血管性痴ほうは、小さな脳出血や脳梗塞が何回も起き、症状は階段状に徐々に進行します。記憶障害があっても、判断力などは残っていることが多く、これを『まだら痴ほう』といいます。初期症状としては、頭痛、めまい、言語障害、感覚障害、震えなどが多い」と説明しています。
 治療薬としては、脳代謝改善薬と脳循環改善薬とがあります。脳代謝改善薬は、脳内のエネルギー代謝を高めたり、神経伝達物質の量を増やしたり、逆にその分解を抑えたりします。脳循環改善薬には、血管を広げたり、血小板に働いて血液が凝固しにくくしたり、赤血球が変形する能力を高めて血液中を流れやすいようにしたりするものがあります。

5. 女性に多いアルツハイマー病

 アルツハイマー病では、脳の神経細胞が委縮したり、脱落したりします。亡くなった人の脳を解剖すると、多数の老人斑と呼ばれるしみがあり、中心にはβアミロイドタンパクが沈着しています。老人斑は、年をとればだれにでも現れますが、正常老人では脳の海馬という部分に限られているのに対して、アルツハイマー病では脳全体に多数出てきます。老人斑のほかにも、異常なリン酸化を受けたタウタンパク質が細胞の中に蓄積して神経線維がねじれる神経原線維変化により、神経細胞やシナプスが消失します。これがアルツハイマー病の典型的な特徴です。
 小川教授は「脳血管性痴ほうと比べてアルツハイマー病では、人格障害が早期から現れ、病識が早期からない。脳血管性痴ほうが男性に多いのに対して、アルツハイマー病は女性に多い」と指摘しています。脳血管性痴ほうと違って、アルツハイマー病の症状にはパターンがあり、3段階に分類されます。
 まず、第1期では、昔の記憶は比較的保持されているが、最近のできごとに対しては異常に忘れっぽくなる。何回も同じことを聞いたり、重要な用事を忘れたりしても、本人に物忘れの自覚が乏しい。行動意欲に乏しかったり、時にはいらいらしたりもするが、どうにか自立生活ができるレベルです。
 第2期では、自分がいまどこに居るのか、いま何時ごろなのか分からなくなったり(見当識障害)、失語、はいかいなどが出てきて介護が必要になります。
 第3期では、寝たきりとなり、人格も崩壊してしまいます。


6. アルツハイマー病のメカニズムと治療

 発症のメカニズムとしては、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が正常に分解されずにβアミロイドタンパクが多量に切り出され、これらが凝縮して老人斑となり、それがタウタンパク質のリン酸化を引き起こして神経原線維変化を引き起こし、その結果として神経細胞が機能障害に陥る、という仮説が現在有力です。アルツハイマー病のごく一部には、親から子どもへと遺伝する家族性のアルツハイマー病があります。
 家族性のアルツハイマー病の原因究明はかなり進んでいて、原因遺伝子として、第21染色体にあるβアミロイドタンパク前駆体タンパク遺伝子、第1染色体にあるプレセニリン1遺伝子や第14染色体にあるプレセニリン2遺伝子の異常などが見つかっています。また、第19染色体にあるアポリポタンパクE遺伝子の産物には、ε2,ε3、ε4の3種類ありますが、このうちε4を持つ人が発症しやすいことが分かっています。
 アルツハイマー病で傷害される神経は主に、記憶や学習に関係しているコリン作動性神経系です。これはアセチルコリンを神経伝達物質として合成している神経系で、大脳皮質でアセチルコリンの減少が特徴的です。アセチルコリンは、ブドウ糖から作られるアセチルCoAとコリンから、アセチルコリン合成酵素によって合成され、シナプスで放出されて、ムスカリン性受容体かニコチン性受容体に結合します。役目を終えたアセチルコリンは、アセチルコリンエステラーゼという分解酵素により酢酸とコリンに分解され、コリンは再び神経に取り込まれて再利用されます。
 現在、治療薬としては、アセチルコリン分解酵素阻害薬が使われています。アセチルコリンの分解を抑えることで脳内のアセチルコリンの量を増やそうというわけです。この他にも、アセチルコリン合成酵素の活性が著しく低下していることからその活性を促進する薬、アセチルコリンの前駆物質なども試みられています。
 また、脳内でも免疫炎症反応が起こっていることが最近分かり、非ステロイド系消炎鎮痛薬も試みられています。ほかに、女性ホルモンのエストロゲン補充療法や、アルツハイマー病のそもそもの発端であるβアミロイドタンパクを分解したり、その産生や凝集を抑制したりすることも研究されています。さらには、神経原線維変化を防ぐためにリン酸化酵素を抑制する薬や、神経の成長を促す神経成長因子(NGF)と同じ働きをする薬の開発なども試みられています。米国では、βアミロイドタンパクをワクチンとして使って、それを攻撃する抗体を作らせることでβアミロイドタンパクを取り去ってしまおうという研究が進められているそうです。
 さまざまな方面からのアプローチがなされているわけですが、小川教授は「消炎鎮痛剤や免疫抑制剤を使う治療法が、神経ネットワークの破壊が進行するのを抑える薬として有望かもしれない」と期待を寄せています。

7. 解明進むパーキンソン病

 老人性痴ほうとはやや異なりますが、運動機能障害が起きるパーキンソン病は痴ほうとともに重要な病気です。パーキンソン病は、中脳の黒質という部位が傷害されることで大脳の中の線条体で神経伝達物質のドーパミンが欠乏して起きる病気です。中年以降に発症、ゆっくりと進行する神経変性疾患で、当初は手の震えや動作がゆっくりするなどで始まり、その後、姿勢保持ができなくなり、ついには言語障害、そして寝たきりとなります。神経伝達物質が欠乏して発症することなど、アルツハイマー病と似ているところが多い病気ですが、アルツハイマー病よりもメカニズムの解明が進み、さまざまな治療法が開発されています。
 治療法としては、ドーパミンが減少して起きる病気なので、ドーパミンの前駆体であるLドーパを投与する療法が主です。もちろんLドーパ療法も根治療法ではなく、何年間も使っていると薬効が落ちてくるという問題があります。Lドーパのほかに、ドーパミンの放出を促進する薬やドーパミン受容体刺激剤、ドーパミン代謝酵素阻害薬などが使われています。
 『レナードの朝』(1990年)という映画があります。流行性脳炎の後遺症によるパーキンソン症候群で、30年間も石像のように固まってしまい、他人と何のコミュニケーションもとれなかった患者たちが、ある日、Lドーパの投与で奇跡のように30年の眠りから覚めたという、1969年夏に米国で実際にあった実話の映画化です。精神科医を演じるロビン・ウィリアムズと30年ぶりに目覚める患者役のロバート・デ・ニーロの名作です。映画では、せっかく長い眠りから覚めた患者たちも、夏が過ぎるころにはまたもとの眠りについてしまいます。薬効が長続きしないのがLドーパの課題だったからです。
 アルツハイマー病でも、このような薬が登場することがあるのでしょうか。小川教授は「パーキンソン病と違って、アルツハイマー病では神経伝達物質が少なくなっているうえに、神経細胞のネットワークも壊れている。工場に例えれば、工場はガタガタで原材料もない状態。工場があって原料だけがないパーキンソン病より、治療はずっと難しい。将来的なアルツハイマー病の治療目標は、『早期に発見する技術を確立して、その進行を遅らせる』になるのではないか」と話しています。

8. 身近な痴ほう予防

 どうも、痴ほう治療は一筋縄ではいきそうにありません。でも、予防に関しては日常生活の中でできることがいくつかありそうです。脳血管性痴ほうでは、動脈硬化がその病気の背景にあるので、糖尿病や高血圧、高脂血症などにならないようにして、食生活や運動、たばこなどにも気を付けることが大切です。それから脳循環を高めるため、いつも活動的であることが必要でしょう。
 では、アルツハイマー病についてはどうでしょうか。アルツハイマー病の人は、若いころ頑固、短気、消極的だったという人が多いという調査結果があります。また、中年のころに趣味が少なく、社会活動に消極的な人が多いともいわれています。小川教授は「しかし、見方を変えると、中年のころからすでにゆっくりと潜行的に発病していると考えられますね」と話しています。若い時の頭部外傷がアルツハイマーの危険因子とされており、頭部に衝撃を受けたり、外傷を負ったりしないよう気を付けることも大切です。

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"電子消費者契約法になるために30代,40から転職"
電子消費者契約法とは、電子商取引における消費者の操作ミスの救済、電子商取引などにおける契約の成立時期の転換(電子契約では、事業者側の申込み承諾の通知が消費者に届いた時点で契約成立なる)などを定めた法律 http://ambassy.ellingtonrecords.com/
2008/08/31(日) 06:42 | URL | #-[ 編集]
バジルと太ももダイエット
バジルはインド、地中海地方が原産のハーブです http://flabar.sabellsenterprises.com/
2008/11/03(月) 06:10 | URL | #-[ 編集]
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