高齢者

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高齢期で重要なこと

「高齢期において重要なことは何だと思うか」についてみると、「健康であること」が71.9%と最も高く、次いで「子どもなどとの家族関係をよくすること」46.9%、「良好な夫婦関係を保つこと」38.7%、「趣味をもつこと」34.5%、「隣人との関係をよくすること」22.3%、「経済的に安定していること」20.1%と続いている。

都市規模別にみると、都市規模が小さくなるほど「子どもなどとの家族関係をよくすること」の割合が高くなっている(大都市:39.1%、中都市:46.3%、小都市:47.8%、町村:51.7%)。

性別にみると、「健康であること」(女性:75.8%、男性:66.9%)、「子どもなどとの家族関係をよくすること」(女性:50.9%、男性:41.7%)、「隣人との関係をよくすること」(女性:26.0%、男性:17.7%)などでは女性の割合が男性の割合を上回っている。一方、男性の割合が女性の割合を上回っている項目は「良好な夫婦関係を保つこと」(男性:53.0%、女性:27.5%)、「仕事をもつこと」(男性:17.5%、女性:10.3%)などとなっており、特に「良好な夫婦関係を保つこと」の男女差が大きく現れている。

年齢階級別にみると、「健康であること」は全ての年齢階級において他の項目に比べ高い割合となっており、「80歳以上」が80.4%と最も高い割合となっている。また、「良好な夫婦関係を保つこと」は、年齢が高くなるに従い下降している。

今後持ちたい、又は今後とも持ち続けたい

次に「今後持ちたい、又は今後とも持ち続けたいと思っている趣味は何か」についてみると、何らかの持ちたい趣味を答えた人は82.0%となっている。趣味の内訳をみると、現在の趣味でも最も高い割合である「園芸、庭いじり」がは30.5%と最も高くなっている。以下は「旅行、ドライブ」(26.6%)、「テレビをみる」(21.0%)、「散歩」(18.3%)、「絵画、音楽、俳句、書道、写真、陶芸などの創作活動」(16.6%)、「手芸、茶道、華道、踊り」(16.0%)。「スポーツをする(登山、ハイキングなどを含む)」(12.9%)、「読書」(12.5%)、「カラオケ」(9.9%)などが続いている。

なお、これらの趣味を上述の「現在の趣味」と比較すると、多くの項目において割合が低くなっている。特に「テレビをみる」(現在:31.4%、今後:21.0%)が低くなっているのが著しい。

しかし、「絵画、音楽、俳句、書道、写真、陶芸などの創作活動」(現在:15.9%、今後:16.6%)、「学習活動」(現在:3.0%、今後:4.6%)、「ワープロ」(現在:2.4%、今後:3.3%)、パソコン(現在:1.1%、今後:2.2%)については、「現在の趣味」に比べ割合が高くなっている。

生きがいを感じる時

生きがいについて、「十分感じている」か「多少感じている」と答えた人に、「生きがいを感じるのは、どのような時か」についてみると、「孫など家族との団らんの時」が44.1%で最も高く、「趣味やスポーツに熱中している時」(33.5%)、「仕事に打ち込んでいる時」(31.8%)、「旅行に行っている時」(30.7%)が3割台で続き、以下は「テレビを見たり、ラジオを聞いている時」(29.4%)、「友人や知人と食事、雑談している時」(28.5%)、「夫婦団らんの時」(26.0%)と続いている。

性別にみると、「仕事に打ち込んでいる時」(男性:41.5%、女牲:24.3%)、「夫婦団らんの時」(男性:30.7%、女性:22.3%)などは男性の割合がそれぞれ17.2ポイント、8.4ポイント高くなっている。一方「孫など家族との団らんの時」(男性:37.5%、女性:49.0%)、「友人や知人と食事、雑談している時」(男性:20.3%、女性:34.8%)、「テレビを見たり、ラジオを聞いている時」(男性:25.9%、女性:32.0%)などは女性の割合がそれぞれ11.5ポイント、14.5ポイント、6.1ポイント高くなっている。

年齢階級別にみると、「仕事に打ち込んでいる時」は「60~64歳」で40.4%と最も高く、年齢の増加とともに下降している。「テレビを見たり、ラジオを聞いている時」は「60~64歳」が24.7%と最も低く、年齢の増加とともに上昇する傾向がみられる。

現在の心配ごとや悩みごと

「現在、心配ごとや悩みごとがあるか」についてみると、何らかの心配ごとや悩みごとを答えた人は43.3%となっている。心配ごとや悩みごとの内訳をみると、「自分や配偶者の健康のこと」(24.4%)がほぼ4人に1人と最も高い割合となっている。以下は大きく離れて「配偶者に先立たれた後の生活のこと」(8.3%)、「生活費など経済的なこと」(7.7%)、「一人暮らしになること」(6.6%)、「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」(6.l%)、「孤独になること」(5.5%)と続いている。

性別にみると、「配偶者に先立たれた後の生活のこと」は男性(11.5%)が女性(5.8%)に比べ5.7ポイント高く、「病気などのとき、面倒をみてくれる人がいないこと」では女性(8.1%)が男性(3.6%)を4.5ポイント上回っている。

現在の健康状態別にみると、「心配ごとはない」は、健康状態が良いほど高い割合となっている。

高齢者の恋愛や結婚について

「高齢者の恋愛や結婚についてどう思うか」についてみると、「良いことだと思う」は45.3%で、「あまり良いことだとは思わない」(10.5%)を大きく上回っている。また、「どちらともいえない」は33.8%と3人に1人の割合となっており、「わからない」は10.3%となっている。

性別にみると、「良いことだと思う」(男性:50.2%、女性41.5%)は男性8.7ポイント高く、「どちらともいえない」(男性:30.8%、女性36.1%)は女性が5.3ポイント高い割合となっている。

年齢階級別にみると、「良いことだと思う」は年齢が高いほど低くなっており、「60~64歳」では52.l%と5割を超えているが、「80歳以上」では28.0%となっている。一方、「あまり良いことだとは思わない」は年齢の増加とともに上昇する傾向がみられる。

配偶者の有無別にみると、「良いことだと思う」は配偶者が「いる」(48.2%)が「いない」〈37.3%)を10.9ポイント上回っている。

職業の有無別にみると、「良いことだと思う」は「有職」(52.5%)が「無職」(41.3%)を11.2ポイント上回っている。

子どもの有無別にみると、「良いことだと思う」は子どもが「いない」(52.8%)が「いる」(44.8%)を8.0ポイント上回っている。

生きがいを感している人と感じていない人別にみると、「良いことだと思う」は『感じている』(49.6%)が『感じていない』(31.5%)を18.1ポイント上回っている。

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高齢化社会の出現を目の前にした今日、改めて高齢者の健康・体力問題がクローズアップされている。その時、先づ必要なことは高齢者の体力特性をしっかり把握することであろう。

1.はじめに

 近年、我々の日常生活に於ける生活環境の改善は高齢化社会を生み出しつつある。全国の65歳以上の高齢者は今年中に1800万人に達し、人口に占める割合も14.5%を越す。昨年厚生省が介護を要する高齢者数を集計したところ100万人に達した。他に生活上の援助が必要な高齢者が100万人あり、合わせて200万人。この数は2000年には280万人、2025年には520万人に達すると見ている。家族の数も減り、家族による介護は限界に来ている。大都市周辺では高齢者が施設に入るのに2~3年待ちの状態が続いている。
 年齢を重ねること(加齢)は、筋肉や神経など身体を構成する諸器官の発揮機能の低下を引き起こす。また、適切な身体運動がなければ筋・骨格系、呼吸循環系、神経系などの器官・組織は退化する。一般に加齢にともない身体運動は減少する傾向にあるので、身体の各器官や組織は加齢とともに運動不足の影響が加わり加速度的にその機能を低下させることになる。このことは、高齢者にとって健康的な日常生活を実施するためには身体運動の実施が必要不可欠であることを意味する。

2.体力のある人は健康か

 高齢者の体力を考える場合には、健康との関係が特に重要になる。体力とは身体の活動水準の高低を指す場合が多い。健康とは単に病弱ではないというだけではなく肉体的、精神的、社会的に良好な状態である(WHOの定義)。体力は計測が可能である一方健康は定量化するための適当な指標がない。図1は健康と体力との関係を示したものである。個々では体力的に優れていても病気がちな人も見かけられるが、全体的には体力のある人は健康的であると言える。
 加齢とともに日常生活に於ける身体を動かす機会が少なくなり運動量が減少し、いわゆる運動不足症になりやすい。運動不足は筋・骨格系、呼吸循環系、神経系の機能低下を引き起こす。筋・骨格系能力とは腰や膝を曲げたり伸ばしたりする力やパワー及びその持続能力を指す。呼吸循環器系能力とは、歩いたり走ったりしてもあまり疲れない能力のことであり、心臓及び肺臓あるいは血管などの組織の機能を指す。神経系は、筋・骨格系や呼吸循環系の働きをコントロールする役割を果たす。これらの各系の機能がバランス良く働くことなくては健康的な日常生活は保証されない。

3.体力とは何か

 一般に言われている「体力」とはパワーやスタミナ等、身体が発揮することが出来るエネルギー出力量およびそれをコントロールする神経機能を指す場合が多い。
 身体運動によるエネルギー出力量は、一気に階段を駆け上がったり、ジャンプしたり、重いものを持ち上げたりするために必要な能力(これを無酸素的能力という)及び、長時間の歩行やジョギングを遂行する能力に代表されるように、スタミナを表す能力(有酸素的能力)である。
 これらのエネルギー出力量は神経系の機能(巧みさ、スキルとも呼ばれる)によりコントロールされる。たとえば、パワーがあり、スタミナのある人でも筋を効果的に働かすための神経系の機能が十分でなければ「歩く」、「階段を上がる」等の身体運動を効果的に実施することは出来ない。
 つまり、身体運動で発揮される各能力は、呼吸循環系、筋骨格系、及び神経系が中心となり発揮される機能により構成されている。

1)呼吸循環系能力(スタミナ)
 ジョギングやウォーキング等の身体全体を使う運動が長時間持続するためには、活動している筋肉まで酸素が十分に供給されなければらない。この為には肺を中心とする呼吸器官の働きにより体力に充分に酸素を取り込み、心臓を中心とする循環器の働きにより筋まで酸素が供給され続けなければならない。この能力は最大酸素摂取量(体内に取り込むことが出来る最大の酸素量、通常1分間当たりの値を用いる)を測定すれば正確に把握することが出来る。最大酸素摂取量は加齢とともに減少するが、一方で、運動を定期的に実施することにより増加し、不活動で減少する。最大酸素摂取量はいろいろな方法で測定されるが、最も一般的な方法としては、軽い負荷での運動時の心拍数から推定する方法である。他に、フィールドテストとしては一定時間あるいは一定距離を走ったり/歩行したりすることにより推定する方法も良く利用されている。
 最大酸素摂取量が大きな人は長時間の運動に優れた能力を発揮でき、疲れにくいスタミナがあることを表す。このことは、単に長距離走のタイムが良いとか、スポーツの成績が優れている等にとどまらず、大切なことは、日常生活での様々な身体活動においても疲れにくい等の優れた能力を発揮することが出来ることを意味する。このことからも、呼吸循環系能力は体力の各要素の中でも健康と最も関係が深い能力と言える。一定以上の最大酸素摂取量は健康的な生活を維持するために必要条件であろう。

2)筋・骨格系能力
(1)筋、パワー
 この能力は、関節を介して筋が発揮することが出来る力、速度、パワー等で表すことが出来る。つまり、重いものを持ち上げる、素早く動く、高くジャンプする、速く走る等、日常生活に於ける比較的短時間に筋肉を使うような動作で発揮される能力である。この能力は、握力や背筋力などのように関節を介して発揮される力の大小を測定する方法とか、腕立て伏せや上体起こし等のように一定の力を発揮できなくなるまでの回数や時間を測定する方法などにより測定される。前者は筋の太さにより決定され、後者は筋肉を流れる血液量により決定される。つまり、筋が太く血流量が多い筋は力と持久力があると言うことになる。
 これらの能力は、健康と関係が深い。多くの腰痛患者を調べると、姿勢保持に関係の深い筋力が極端に低下していることが分かる。さらに、その人たちに筋力を高める運動を処方した結果、腰痛が減少したことが報告されている。
(2)関節の可動範囲(柔軟性)
 身体は、肘、膝、脊髄など数多くの関節により出来上がっている。これら関節の可動範囲が広い人はケガや障害も少なく、優れた運動能力を発揮することが出来る場合が多い。この機能は柔軟性とも言われる。柔軟性は関節をとりまく腱や靱帯あるいは拮抗筋(曲げるときには伸展筋、伸ばすときには屈曲筋)が如何に弾力性に富んでいるかにより決まる。柔軟性に欠けると、姿勢が悪くなる、その結果としての内臓疾患や腰痛などの弊害を引き起こす。

3)神経系能力(巧みさ)
 人の動作は筋の収縮が神経の支配を受けて成り立つ。優れた機能を有する筋肉もその収縮が巧くコントロールされなければ目的とする動作は成立しない。神経系の機能は全身反応時間の測定など反応時間や、反射時間を計測することにより推定できる。

4.身体組成(身体のなかみ)は運動と栄養のバランスを表す

 身体を構成する組織の比率(身体組成)も体力を考える上で欠かすことが出来ない要因である。人の健康の度合いをとらえる場合、食事と運動とのバランス、すなわち、身体内部に出入りするエネルギー需給バランスが非常に重要な意味をもつ。エネルギーの入力過剰は身体内部の脂肪の蓄積を意味する。現代社会では十分な食事がエネルギー入力量を増加させ、一方で、機械化社会が運動の機会を減少させエネルギー出力量の減少を引き起こし、結果的に、運動不足-脂肪蓄積-肥満-成人病の非健康的パターンを招来する。肥満の程度が増すにつれ、虚血性心疾患や高血圧性心疾患などの心臓病の罹患率が増大することが報告されている。

 一般に肥満とは体重の中で脂肪の占める比率(体脂肪率)が一定以上を越えた場合を言う。普通、肥満とは体脂肪率が20%(男)及び30%(女)以上を指す場合が多い。肥満を判定する方法には、水中体重秤量法、インピーダンス法、カリウム法、近赤外線法、超音波法、キャリパー法などがある。これらの方法はいずれも専門的な装置と知識を備えていなければ正確な測定が出来ない。そこで、誰でもどこでも簡単に測定が出来る方法として、一般的には身長と体重とから肥満度を算出する場合が多い。その場合、体重が普通より(標準体重)重い場合でも(多くのスポーツ選手のように)脂肪以外の組織(筋、骨など)が発達している場合も含まれるので注意を要する。その他の簡単な肥満判定法として腹囲/腰囲比/(W/H比)が用いられる場合も多い。体脂肪率とW/H比あるいは腹囲との間には高い有意な相関関係が認められているので、家庭で簡単に肥満度を見るには腹部の周径囲を計測することが効果的であろう。
 運動しない代わりに食事量も少なくしてエネルギー入出力バランスを保つ工夫も考えられ、多くの減量ダイエットもこの方式がとられる場合が多い。その時、運動を実施しない(すなわち筋を収縮させない)ことが筋の萎縮を引き起こし、肥満にならないけれども、結果的に活動水準を下げることになり、病気に対する抵抗力をも失うことにつながる。筋・骨格系、呼吸循環系は運動を実施することによりのみ発達することを忘れてはならない。本来、人間の身体は普通の食事と充分な運動量が確保されていれば肥満にはならないように出来ているわけである。

5.加齢により体力は低下する

1)呼吸循環系能力
呼吸循環系能力を最も客観的に見る指標として最大酸素摂取量がある。この加齢変化を男性について見ると(図4)、30歳代では40ミリリットル/体重/分であったのが加齢とともにほぼ直線的に減少し、60歳代では20ミリリットル/体重/分となる。女性は男性の約70%を示し、加齢変化は男性とほぼ同じである。最大酸素摂取量は生体内に最大限どの程度の酸素を供給できるかの能力を見るものであり、この値が高い人はスタミナがあることを意味する。従って、一般的には全身のスタミナは60歳代には既に30歳代の約半分になると考えられる。


2)筋・骨格系能力
(1)関節トルク(筋力)
 この能力を一般的に表すものとして文部省が定期的に実施している体力テストの結果が参考になる。握力、背筋力、垂直跳びはいずれの値も加齢に伴いほぼ直線的に減少する傾向を示し、60歳代では20~30歳代の70%(握力)、60%(背筋力)及び50%(垂直跳び)となる。このことは、腕の筋力は体幹あるいは下肢の筋力に比較して老化が激しいことを示しているのかもしれない。そこで、これらの現象をより明確にするために、上下肢の筋力及び筋厚を測定し、加齢変化を見た。その結果、腕の筋力(腕屈曲力)に比較して、脚の筋力(膝伸展力)は加齢にともなう減少が大きい傾向が見られた。そこで、腕及び脚を構成する筋量を超音波を用いて測定した。腕に比較して脚筋の加齢減少が著しいことが明らかとなった。
 ところで、筋は筋線維の集合体である。筋線維には力が強くスピードの速い速筋線維とスタミナのある遅筋線維とがある。ゆっくりした動作や弱い力を発揮するときには主として遅筋線維により行われ、強い力や速い動作は速筋線維により行われる。身体の各筋は両筋線維が混在しているが、加齢に伴い、速筋線維がより萎縮(細くなる)しやすい。このことは、高齢者は速い動きや強い力を発揮することが不得意であることにつながる。この老化を防ぐには、速筋線維の加齢による萎縮を少なくするような運動を実施することが必要である。つまり、ジョギングやウォーキング等ゆっくりした運動を長時間行うことにより遅筋線維と呼吸循環系を鍛えるとともに、その運動の中に少し強めの運動を加味して(数分以内の僅かな時間でよい)、速筋線維を鍛えるような工夫が必要であろう。


(2)関節可動範囲(柔軟性)
 柔軟性を見る代表的なテストとして体前屈がある。文部省による体力テストでの立位体前屈及び上体そらしの加齢変化を見ると、加齢とともにいずれも急激に減少する傾向を示し、柔軟性が少なくなる傾向が見られる。これを予防するには筋や腱を伸張させるストレッチングが非常に効果的である。
3)神経系能力
 加齢とともに神経系の機能も低下する。反応時間は神経系の働きを見る良い指標である。単純反応時間は20歳代を頂点として次第に延長していく。すなわち、外界の変化に対する反応が次第に悪くなることを示している。

4)身体組成
(1)歳をとると太るか?
 歳をとると体脂肪率はどのように変化するのであろうか?これまでの研究によると、体脂肪率は加齢とともに増加するようである。
 皮下脂肪厚を見ると部位により傾向が異なる。男女ともに他の部位に比較して腹部の皮下脂肪が最も厚い傾向を示し、その値は50歳あたりで最大を示し、その後、加齢とともに減少傾向が見られる。他の部位については顕著な加齢変化は見られない。

(2)筋肉は年とともに細くなる
 ところで、筋について見るといずれの部位においても、男女ともに、加齢とともに急激な筋厚の減少が見られる。更に、その加齢変化は筋により異なるようである。男女ともに最も加齢減少が著しいのは脚の筋、特に大腿前面の筋(大腿直筋と中間広筋)であり、70歳代は若者の約56%となる。つまり、加齢とともに脚の筋は急激に減少し、70歳を過ぎると30歳時の約半分の筋量になると考えられる。男女で比較すると、いずれの部位においても男性の方が加齢に伴う筋の減少が著しい。
 興味あることに、身体の前面と後面とに付着する各筋群の厚さの加齢減少を比較すると、上腕では後面が、体幹及び脚では前面の筋の減少が著しい。これを、それぞれの筋の役割との関係で考えると面白いことが考えられる。上腕の前面の筋は肘屈曲に働き、後面の筋は肘伸展に働く。立位姿勢の場合、肘屈曲は重力に逆らい行われ、伸展に比較して強い筋力発揮を強いられる。日常生活での動作を見ると、物を持ち上げたり、移動したりする動作は数多く行われ、その為には肘屈曲動作が多く使われる。一方、肘伸展動作は重力に抗しないので特に力を必要としないでも実施される場合が多い。このように考えると、肘屈曲動の主動筋である上腕前面の筋(上腕二頭筋)が力を発揮する機会が多く、一方、後面の筋(上腕三頭筋)は力を発揮する機会の少ないことが、加齢に伴う筋萎縮を著しくしたものと考えられる。同様なことは、体幹及び脚の筋についても考えられる。体幹前面(腹筋)及び脚前面(大腿四頭筋)の筋は何れも体幹前屈あるいは股関節屈曲の主動筋であり、立ち上がる、起きあがる、歩く等日常生活に欠かすことの出来ない基本的な動作を構成する主要筋群である。加齢に伴いこれらの筋群の量が減少したことは、これらの動作が加齢とともに少なくなってきたことを意味しているのかもしれない。このことは運動量が加齢とともに少なくなることを意味すると考えられる。


6.身体不活動(ベッド安静)状態は筋機能は著しく低下させる。

 運動実践とは対局的な意味をもつ、実験的に身体不活動を規定したベッド安静による筋の機能面の変化を紹介する。健康な成人男女10名について20日間のベッド安静を遂行した。図10に示すようにベッド安静によりパワーが減少する傾向が見られたが、その減少傾向には部位による差が見られた。肘の屈曲および伸展に比較して、膝の伸展及び屈曲の減少が著しい傾向が見られた。3週間のベッド安静で最もパワーの減少が見られたのは膝伸展であり30~40%も低下した。かつ、ベッド安静終了後普通の日常生活に戻した後の1ヵ月後には上肢のパワーはほぼ正常値に戻っているが、下肢のパワーは依然として低い値を示したままであることは注目しなければならない。
 この研究は20歳代の若者(大学生)を対象としたものであるが、高齢者の場合にはさらにより大きな筋機能低下が引き起こされるものと考えられる。


7.おわりに-中高齢者でも体力レベルは運動により高まる

1)運動を定期的に実施している人の筋・骨格系機能は高い
 適切な身体運動の実施により筋・骨格系の機能は発達する。しかし、その運動による効果は年齢により異なる。青年期に比較して高齢期には効果が充分に見られるものであろうか?これらの疑問に答えるために、40歳以降70歳代までの男性を対象にスポーツクラブ等で日頃定期的な運動を実施している人達(運動群75名)と、特別な身体運動を実施していない人達(コントロール群47名)について筋・骨格系機能を調査した(図11)。その結果、肘屈曲パワーでは運動群とコントロール群との間には各年齢とともに殆んど差がみられなかった。しかし、脚伸展パワーでは高年齢になるほど運動群が高い値を示した。前述の下肢の筋群の老化が著しいことを考えると、この資料は定期的な身体運動が特に下段の筋機能低下を防ぐのに効果的であることを示すものとして興味深い。
 更に、日常に生活においては、起きあがる、立ち上がる、歩く等の動作は健康的で活動的な生活をエンジョイする上でも欠かすことの出来ない代表的動作である。椅子から立ち上がる動作を如何に敏捷に出来るかは日常生活を営む上で基本的に重要な人間の動きの能力と考えられる。そこで、椅子から立ち上がり-座る、一連の動作を繰り返すことが出来る時間(10回繰り返すに要した時間)を測定してみた。その結果を見ると(図11)、40歳代では両群ともに同じ時間(10秒)であり、コントロール群では明らかに加齢とともに時間が長くなる傾向を示した(50歳代では13秒、60歳代では16秒)。一方、運動群では50歳代、60歳代ともに11秒で加齢変化は殆ど見られなかった。立ち上がり動作は主として大腿伸展筋により行われることから、前述の脚伸展パワーの運動群の優位性と同じく、下肢筋を主動筋とする動作の老化防止に定期的な身体運動の重要性が示されているものと考えられる。
 以上、脚筋パワー及び立ち上がり能力に見られた運動群の優位性は、日常生活に於ける身体運動が筋骨格系機能の改善に効果的であることを如実に示すものである。特に、立ち上がり動作等の日常生活に直結する動作の能力に非常に効果的であることは、活動的な生活を保証するものとして注目されよう。
2)高齢者でも定期的な身体運動により筋機能の向上が見られる
 中高年齢者が定期的に一年間の運動実践を行った時に筋・骨格系機能はどのように変化するだろうか?茨城県の東南部に位置する人口約1万1,000人の村で、殆どが兼業農家を営み、習慣的なスポーツ等の身体運動の経験のない人たち(118名)が定期的にプログラムされた身体運動を実施した。運動の内容は水泳、筋力トレーニング、エアロビック体操などであった。その結果、膝関節伸展動作においては3種類の負荷条件ともパワー発揮に統計的に有意な増加が認められた。力と速度からパワー向上のトレーニング効果について考察してみると、軽い負荷でのパワー発揮においては速度の有意な増加が、一方、重い負荷での同条件においては力発揮の有意な増加がパワーの向上に影響を及ぼしていることが示された。つまり、中高年齢者といえども定期的に運動を実践することにより、動作スピードと動作筋力の両面が改善されたと解釈することができる。

おわりに

 高年齢になるに伴い筋骨格系機能が低下することは生物学的特性として致し方のないことであるが、その能力は日常生活習慣や環境条件などにより強く影響されると考えられる。前述のように加齢と運動不足の相乗効果が急激な筋骨格系機能の低下を導く。加齢変化は人為的に変えられようもないが、その変化に身体運動は見事に影響を与える主要条件である。身体を構成する器官や組織の形態と機能に対する加齢変化を的確に把握し、自分の生活習慣にフィードバックすることが出来るかどうかは、まさしく各自の知性と教養によるものであろう。


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痴ほうは、60歳代後半から年齢を重ねるとともに増加し、85歳を超えると5人に一人がなるといわれています。社会の高齢化が進むにしたがって、日本の痴ほう患者の数もどんどん増えています。人間いつかは死にますが、痴ほうで最期を迎えることは、できれば避けたいものです。壊れてしまった脳神経細胞を復活させることは難しいでしょうが、老年神経病学の研究と臨床に詳しい、小川紀雄岡山大学医学部教授は「最近の痴ほうに関する研究や新薬の開発などで、症状を改善したり、発症を予防したり、病気の進行を抑えたりすることに期待が持てるようになりつつあります」と指摘しています。痴ほう研究の新しい成果などを紹介して、痴ほう予防のヒントを考えてみました。

1. 良性健忘と悪性健忘は違う

 中年を過ぎると、「ええと、あの背の高い、少し髪の薄い、あいつ何て言ったっけなあ」と知人の名前を「ど忘れ」してしまうことがよく起きます。「夕食時のビールがないなあ」と、近くのコンビニに行って、面白そうな週刊誌が目に留まって週刊誌を購入、肝心のビールは買わずに帰宅してしまう、なんてことも時々あります。でも、「ああ、おれもぼけたかなあ」なんて心配しているうちは問題ありません。これらは良性健忘と呼ばれ、病的な悪性健忘とは区別されています。
 悪性健忘の場合は、自分が忘れたという事実そのものを覚えていないし、もちろん反省することもしません。痴ほうの中核症状は悪性健忘を主体とした知的機能の低下で、周辺症状としては、異常行動、はいかい、幻想、妄想、情緒障害、うつ、意欲減退などがありますが、そのなかに「ど忘れ」はありません。

2. 老人性痴ほうは神経細胞が死ぬ病気

 老人性痴ほうを引き起こす病気としては、脳血管性痴ほうとアルツハイマー病の2つが大部分を占めます。欧米ではアルツハイマー病の方が脳血管性痴ほうより多いとされていますが、日本では逆に、脳血管性痴ほうの方が多いようです。これらの病気では脳の神経細胞が死に、脳内に隙間ができます。神経細胞は皮膚や血管、肝臓などの細胞と違って再生しない細胞ですので、死んだらもう元には戻りません。そういう意味では、痴ほうを治す薬はまだありません。それでも、周辺症状を改善する薬は次々と開発されており、介護をしている人たちにとっても大きな助けとなっています。なお、老人性痴ほうではありませんが、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、脳腫瘍、AIDS脳症など、手術や薬で治療可能な痴ほうもあるので気を付けてください。また、薬の副作用で痴ほうに似た症状が出ることもあります。
 脳神経細胞が脱落するに従って脳の重量そのものも減少します。小川教授は「90歳の人の肝臓の重さが30歳の時の半分であることと比べると、脳の重量減は10数%と少なく、脳は老化による委縮が少ない臓器です。でも、記憶や判断など知的機能をつかさどる、大脳皮質の神経細胞の数そのものは重量以上に減少しています」と言っています。脳は、その重量が体重の2.5%しかないにもかかわらず、脳の代謝はからだ全体の代謝の20~24%も占めています。つまり、脳は非常に大量のエネルギーを消費する器官なのです。でも、年をとれば脳機能が低下して、代謝も低下、血流も減少します。小川教授は「脳血管性痴ほう患者で脳血流量が少ない人は予後が悪いです。一方、アルツハイマー病ではこのような関連はあまりありません」と話しています。


3. 神経の間隙がポイント

 痴ほうのメカニズムを説明する前に、神経のことを説明しておく必要があります。例えば、熱い物をさわったとします。すると、その熱による刺激は、最終的には脳に伝えられるのですが、その間、その信号はたくさんの神経細胞をバケツリレーのようにして伝わります。1つの細胞内で刺激は電気信号という形で伝わりますが、神経と神経の間には隙間があるので、そこで電気信号は一時、化学物質による化学信号に置き換えられて、次の神経細胞に伝えられるのです。この間隙をシナプスといい、寸法はだいたい10万分の2~3mmです。この化学物質を神経伝達物質といい、神経伝達物質を受け取る次の細胞の受付にあたる部分を受容体といいます。
 痴ほうの問題の多くは、このシナプス周辺の異常で起こっています。火事現場で必死に脱出している時に指先に火傷するほど熱い物が触れても何も感じませんが、暗闇の中をおそるおそる手探りで進んでいる時、指先にちょっとでも熱いものが触れれば、びっくりします。つまり、同じ刺激でもからだの反応は学習で変化したり、その時の状況で変化したりします。これが、同じ刺激に対しては同じ反応しかしないパソコンや家電製品の電気信号伝達システムとまったく違うところです。電気製品だったら一カ所断線してしまうと機能は完全に停止してしまいますが、脳は細胞同士はお互いに完全に結合しないで、大きなネットワークを作って信号を伝達しているので、ひとつの細胞が死んでも、他の残っている細胞でうまくカバーできるということです。たとえ脳梗塞などで脳のネットワークの一部が壊れてからだの一部がまひしても、残ったネットワークを使って壊れた部分を回避する新しい回路を作ればいいのです。リハビリは、その新しいネットワークを形成するための学習ということです。

4. 脳血管性痴ほうは血管が原因

 脳血管性痴ほうは、高血圧や動脈硬化などが原因で脳内の血管が破れたり(脳出血)、血栓や塞栓で血管が詰まったり(脳梗塞)して、脳の神経細胞に酸素や栄養が供給されなくなって細胞が死んでしまうことから起きます。脳のどこの部分が傷害されるかで症状が変わるため、症状に決まったパターンがありません。小川教授は「脳血管性痴ほうは、小さな脳出血や脳梗塞が何回も起き、症状は階段状に徐々に進行します。記憶障害があっても、判断力などは残っていることが多く、これを『まだら痴ほう』といいます。初期症状としては、頭痛、めまい、言語障害、感覚障害、震えなどが多い」と説明しています。
 治療薬としては、脳代謝改善薬と脳循環改善薬とがあります。脳代謝改善薬は、脳内のエネルギー代謝を高めたり、神経伝達物質の量を増やしたり、逆にその分解を抑えたりします。脳循環改善薬には、血管を広げたり、血小板に働いて血液が凝固しにくくしたり、赤血球が変形する能力を高めて血液中を流れやすいようにしたりするものがあります。

5. 女性に多いアルツハイマー病

 アルツハイマー病では、脳の神経細胞が委縮したり、脱落したりします。亡くなった人の脳を解剖すると、多数の老人斑と呼ばれるしみがあり、中心にはβアミロイドタンパクが沈着しています。老人斑は、年をとればだれにでも現れますが、正常老人では脳の海馬という部分に限られているのに対して、アルツハイマー病では脳全体に多数出てきます。老人斑のほかにも、異常なリン酸化を受けたタウタンパク質が細胞の中に蓄積して神経線維がねじれる神経原線維変化により、神経細胞やシナプスが消失します。これがアルツハイマー病の典型的な特徴です。
 小川教授は「脳血管性痴ほうと比べてアルツハイマー病では、人格障害が早期から現れ、病識が早期からない。脳血管性痴ほうが男性に多いのに対して、アルツハイマー病は女性に多い」と指摘しています。脳血管性痴ほうと違って、アルツハイマー病の症状にはパターンがあり、3段階に分類されます。
 まず、第1期では、昔の記憶は比較的保持されているが、最近のできごとに対しては異常に忘れっぽくなる。何回も同じことを聞いたり、重要な用事を忘れたりしても、本人に物忘れの自覚が乏しい。行動意欲に乏しかったり、時にはいらいらしたりもするが、どうにか自立生活ができるレベルです。
 第2期では、自分がいまどこに居るのか、いま何時ごろなのか分からなくなったり(見当識障害)、失語、はいかいなどが出てきて介護が必要になります。
 第3期では、寝たきりとなり、人格も崩壊してしまいます。


6. アルツハイマー病のメカニズムと治療

 発症のメカニズムとしては、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が正常に分解されずにβアミロイドタンパクが多量に切り出され、これらが凝縮して老人斑となり、それがタウタンパク質のリン酸化を引き起こして神経原線維変化を引き起こし、その結果として神経細胞が機能障害に陥る、という仮説が現在有力です。アルツハイマー病のごく一部には、親から子どもへと遺伝する家族性のアルツハイマー病があります。
 家族性のアルツハイマー病の原因究明はかなり進んでいて、原因遺伝子として、第21染色体にあるβアミロイドタンパク前駆体タンパク遺伝子、第1染色体にあるプレセニリン1遺伝子や第14染色体にあるプレセニリン2遺伝子の異常などが見つかっています。また、第19染色体にあるアポリポタンパクE遺伝子の産物には、ε2,ε3、ε4の3種類ありますが、このうちε4を持つ人が発症しやすいことが分かっています。
 アルツハイマー病で傷害される神経は主に、記憶や学習に関係しているコリン作動性神経系です。これはアセチルコリンを神経伝達物質として合成している神経系で、大脳皮質でアセチルコリンの減少が特徴的です。アセチルコリンは、ブドウ糖から作られるアセチルCoAとコリンから、アセチルコリン合成酵素によって合成され、シナプスで放出されて、ムスカリン性受容体かニコチン性受容体に結合します。役目を終えたアセチルコリンは、アセチルコリンエステラーゼという分解酵素により酢酸とコリンに分解され、コリンは再び神経に取り込まれて再利用されます。
 現在、治療薬としては、アセチルコリン分解酵素阻害薬が使われています。アセチルコリンの分解を抑えることで脳内のアセチルコリンの量を増やそうというわけです。この他にも、アセチルコリン合成酵素の活性が著しく低下していることからその活性を促進する薬、アセチルコリンの前駆物質なども試みられています。
 また、脳内でも免疫炎症反応が起こっていることが最近分かり、非ステロイド系消炎鎮痛薬も試みられています。ほかに、女性ホルモンのエストロゲン補充療法や、アルツハイマー病のそもそもの発端であるβアミロイドタンパクを分解したり、その産生や凝集を抑制したりすることも研究されています。さらには、神経原線維変化を防ぐためにリン酸化酵素を抑制する薬や、神経の成長を促す神経成長因子(NGF)と同じ働きをする薬の開発なども試みられています。米国では、βアミロイドタンパクをワクチンとして使って、それを攻撃する抗体を作らせることでβアミロイドタンパクを取り去ってしまおうという研究が進められているそうです。
 さまざまな方面からのアプローチがなされているわけですが、小川教授は「消炎鎮痛剤や免疫抑制剤を使う治療法が、神経ネットワークの破壊が進行するのを抑える薬として有望かもしれない」と期待を寄せています。

7. 解明進むパーキンソン病

 老人性痴ほうとはやや異なりますが、運動機能障害が起きるパーキンソン病は痴ほうとともに重要な病気です。パーキンソン病は、中脳の黒質という部位が傷害されることで大脳の中の線条体で神経伝達物質のドーパミンが欠乏して起きる病気です。中年以降に発症、ゆっくりと進行する神経変性疾患で、当初は手の震えや動作がゆっくりするなどで始まり、その後、姿勢保持ができなくなり、ついには言語障害、そして寝たきりとなります。神経伝達物質が欠乏して発症することなど、アルツハイマー病と似ているところが多い病気ですが、アルツハイマー病よりもメカニズムの解明が進み、さまざまな治療法が開発されています。
 治療法としては、ドーパミンが減少して起きる病気なので、ドーパミンの前駆体であるLドーパを投与する療法が主です。もちろんLドーパ療法も根治療法ではなく、何年間も使っていると薬効が落ちてくるという問題があります。Lドーパのほかに、ドーパミンの放出を促進する薬やドーパミン受容体刺激剤、ドーパミン代謝酵素阻害薬などが使われています。
 『レナードの朝』(1990年)という映画があります。流行性脳炎の後遺症によるパーキンソン症候群で、30年間も石像のように固まってしまい、他人と何のコミュニケーションもとれなかった患者たちが、ある日、Lドーパの投与で奇跡のように30年の眠りから覚めたという、1969年夏に米国で実際にあった実話の映画化です。精神科医を演じるロビン・ウィリアムズと30年ぶりに目覚める患者役のロバート・デ・ニーロの名作です。映画では、せっかく長い眠りから覚めた患者たちも、夏が過ぎるころにはまたもとの眠りについてしまいます。薬効が長続きしないのがLドーパの課題だったからです。
 アルツハイマー病でも、このような薬が登場することがあるのでしょうか。小川教授は「パーキンソン病と違って、アルツハイマー病では神経伝達物質が少なくなっているうえに、神経細胞のネットワークも壊れている。工場に例えれば、工場はガタガタで原材料もない状態。工場があって原料だけがないパーキンソン病より、治療はずっと難しい。将来的なアルツハイマー病の治療目標は、『早期に発見する技術を確立して、その進行を遅らせる』になるのではないか」と話しています。

8. 身近な痴ほう予防

 どうも、痴ほう治療は一筋縄ではいきそうにありません。でも、予防に関しては日常生活の中でできることがいくつかありそうです。脳血管性痴ほうでは、動脈硬化がその病気の背景にあるので、糖尿病や高血圧、高脂血症などにならないようにして、食生活や運動、たばこなどにも気を付けることが大切です。それから脳循環を高めるため、いつも活動的であることが必要でしょう。
 では、アルツハイマー病についてはどうでしょうか。アルツハイマー病の人は、若いころ頑固、短気、消極的だったという人が多いという調査結果があります。また、中年のころに趣味が少なく、社会活動に消極的な人が多いともいわれています。小川教授は「しかし、見方を変えると、中年のころからすでにゆっくりと潜行的に発病していると考えられますね」と話しています。若い時の頭部外傷がアルツハイマーの危険因子とされており、頭部に衝撃を受けたり、外傷を負ったりしないよう気を付けることも大切です。

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人間だれしも年をとれば老います。耳が遠くなったり、目が悪くなったり、臭いに鈍感になったり、皮膚がかさかさになったり、感覚の衰えは隠しようもありません。
 老化を止めたり、若返ったりさせることは、人類始まって以来の願いです。でも、少なくともこれは現在の科学技術では不可能なことです。しかし、いろいろ工夫することで、老化の速度を少し遅らせることはできそうです。
 では、どうすれば感覚器の老化を遅らせることができるのか。世界の老化研究の成果などを踏まえて、感覚器の老化防止について考えてみましょう。

老化について

 ちまたでは、「○○でお肌の若返り」とか「老化防止に毎日××を」など、科学的根拠に乏しい、怪しげな情報があふれています。でも、老化とは何か、老化はどうやって起きるのかをよく理解していれば、何か特殊な食品を食べたり、特殊な化学物質を塗ることで画期的に老化が防止できる、などということがあり得ないことはすぐに分かります。しかし残念なことに、老化の仕組みはなぞばかりで、はっきりしたことはまだ分かっていない、というのが現実です。とはいえ、昨今のバイオ技術などの力でその秘密のベールが少しずつ明らかになっています。そうした成果を概観したうえで、老化に対してより正確な知識を持って、感覚器の老化を遅らせる方法を考えてみましょう。
 老化はからだ全体で徐々に進行していく現象で、単一の器官や物質が原因で起こる病気ではありません。従って、感覚器の老化予防といっても、基本的にはいわゆる老人病とされる痴ほうや動脈硬化、骨粗しょう症などの予防と同じ考え方になります。つまり、規則正しくストレスのない生活、緑黄色野菜や牛乳などを十分にとるなどバランスのよい食事、毎日の適度な運動などで、これは生活習慣病の予防とも共通しています。あえて言えば、皮膚や眼の老化予防として、戸外で紫外線をあまり浴びないように注意することがそれに付け加わります。
 「そもそも老化とは何か」「どうして老化が起きるのか」ということを考え、老化という現象全体を把握したうえで、個々の感覚器について考えてみましょう。

老化と平均寿命

 まず老化とは何かという問題ですが、これが一筋縄ではいかない難問です。それは、生物界では老化しない生物の方が多いからです。DNA(RNAの場合もありますが)をたんぱく質の膜に包んだだけのウイルスは、動くことも、食べることもなにもしない、生きているのか死んでいるのかすらよく分からない不思議な存在で、永遠の命を持っているという言い方もできます。また、バクテリアのような単細胞生物は、環境さえ整えれば、1つが2つに、2つが4つに、4つが8つにと、無限に分裂して、いくらでも増えていきます。そこには、老化して死んでいく個体などありません。つまり単細胞生物もまた不老不死なのです。杉の木だって銀杏の木だって、環境さえよければ老化などという言葉とは無縁に何百、何千年と生き延びて天を突くような大木となります。
 ところが人間の場合は、どんなによい環境で生活しても、長寿の限界は120歳前後とされています。もし、まったくばい菌のいない場所で、十分な栄養下で生活したとしても、人間などほ乳動物の寿命には必ず限界があるのです。
 明治後期から大正時代の日本人の平均寿命は、男女とも44歳前後でした。それが昭和に入ってどんどん延び始め、昭和30年では、男64歳、女68歳。同50年では男72歳、女77歳、平成10年には男77歳、女84歳となりました。このように平均寿命が延びたのは、抗生物質が発見され、公衆衛生が充実し、乳幼児の死亡も減り、国民の栄養状態がよくなり、各種医療技術が進歩してたいていの病気が治療できるようになったためです。つまり、平均寿命が延びたのは、日本人の老化そのものが遅くなっているというよりは、医療、公衆衛生などの進歩の成果なのです。
 しかしその一方で、昭和初期の70歳と現在の70歳とを比べると、かつてのように腰が曲がっている人は少ないし、顔のしわもそんなに目立たないことも事実です。つまり、過酷な野外の長時間労働が減って快適で清潔な環境での労働が増えたことや、炭水化物中心の質素な食事から栄養豊富でバランスのよい食事ができるようになったことで、皮膚や骨などに現れる一部の老化現象については、確かにその老化速度が遅くなっているという言い方もできるかもしれません。
 つまり、老化を遅らせるということと長生きをするということは、似た考えではあるけれど、まったく同じではないということです。ここでは、長生きをするためというよりも、より快適で楽しい老後を送るため、つまりQOL(生活の質)を上げるために、老化の問題を考えてみましょう。いずれは、120歳という人間の寿命の壁を突き破る画期的な老化防止技術が開発されるかもしれませんが、それはまだ先の話でしょう。


単純でない老化現象

 老化とは、加齢に伴って起こる非可逆的な生理機能の低下のことです。寿命が近づくにつれて人間は、耳が遠くなったり(難聴)、血管が硬くなったり(動脈硬化)、骨が折れやすくなったり(骨粗しょう症)、眼の水晶体が濁ったり(白内障)、頭の働きが衰えてきたり(老人性痴ほう)します。これが老化現象です。 機能の衰えの多くは、臓器の縮小という形で現れてきます。手足の筋肉はやせ細り、各種臓器も小さくなり、骨の密度も低下してきます。もちろん脳細胞も減り続け、CTスキャンなどで調べると脳そのものが委縮しているのが観察されます。細胞レベルで考えると、人のからだから細胞を1個取り出して培養してみると、最初のころはバクテリアのように活発に分裂を始めますが、いずれ増殖をやめて、ついには死んでしまいます。この分裂できる回数が多いほど若い細胞ということになります。
 一方、お年寄りのからだから取った細胞は、若い人の細胞ほど元気に分裂する力がありません。肝臓や皮膚などは一部を切除しても、いずれもとの形に戻りますが、若い人の細胞ほど、この再生力が強いのです。この細胞の分裂能力だけで老化現象の説明ができれば、ことは簡単なのですが、そういかないのが老化研究の難しいところです。例えば、脳の神経細胞や心臓の筋肉などは、生まれた時にすでに増殖を止めており、以降増殖しません。細胞そのものの機能も、年をとるにつれてさまざまな形で衰えていきます。つまり、細胞の老化の問題には、細胞の数の問題と質の問題の2つの側面があるのです。ところで、人間のからだの中にも例外的にバクテリアのようにいつまでも分裂できる不死の細胞があります。それは生殖細胞とがん細胞です。

老化のメカニズム

 どうして生体に老化が起きるのかという問題は、今でも生物学の最大のなぞの1つです。大昔からさまざまな説が提案されては消えています。現在、有力とされているいくつかの説を紹介しましょう。
 老化の時間を刻むタイマーとして最近注目されているのがテロメアです。ヒトの細胞の中には48種類の染色体がありますが、その染色体それぞれの末端にテロメアという構造があります。例えば、縄やひもは、端からほどけないように別のひもで縛ったり、金属や接着剤などで固定したりします。テロメアも同様に、細くて長い染色体が端から壊れないようにと、端を固定して遺伝子の安定化を図っています。このテロメアは、細胞が分裂するごとに一定量短くなり、ある程度短くなると細胞そのものが分裂できなくなり、そして寿命を迎えるのです。テロメアはいわば分裂のための回数券といえます。実は、生体にはこのテロメアを修復する酵素、テロメラーゼがあるのです。
 不死の細胞である生殖細胞とがん細胞では、このテロメラーゼが働いて、テロメアは常に一定量確保されるのです。このため永久に細胞分裂が可能なのです。一方、普通の体細胞ではテロメラーゼは働いていません。もし、体細胞でもこのように、回数券を節約したり修復したりする方法が見つかれば、老化を防止することも夢ではなくなります。
 実際、1998年には米国のジェロン社とテキサス大学の研究グループが、テロメラーゼの遺伝子を人間の体細胞に組み込んでその細胞の分裂回数を増やすことに成功、世界中の注目を集めました。先ほど、老化は細胞数の減少だけでなく、個々の細胞の機能低下でも説明できると紹介しました。細胞数の低下を説明する代表がテロメア説なら、機能低下を説明する代表が活性酸素説です。強い酸化作用があるフリーラジカルや活性酸素がたんぱく質や遺伝子に傷害を与え、その傷害が積み重なって老化が進むという考えです。確かに、皮膚の老化は紫外線によって加速されます。これを「光老化」といいます。また、動脈硬化も活性酸素が脂質を過酸化脂質に変えることで進行します。また、ネズミより犬、犬より馬、馬より象といった具合に、体重あたりの酸素消費量が少ない生物ほど寿命が長いことからも、この活性酸素説の妥当性が理解できます。しかしその一方で、ヒトの体内には、フリーラジカルや活性酸素を無毒化する酵素がきちんとあります。また、食品中のビタミンCやEなどにも抗酸化作用があります。このため、老化防止というと、この抗酸化作用をいかにうまく利用できるかが一つのポイントとなっています。このため、日焼け止めクリームなどで紫外線をできるだけ直接浴びないようにすることや、ビタミンCやEを多く含む緑黄色野菜を多くとることなどが推奨されるのです。1998年に、ハエにSOD(スーパーオキサイドディムスターゼ)など抗酸化酵素の遺伝子を組み込んだところ寿命が2、3割延びたという研究成果が「サイエンス」という科学誌に発表されました。線虫でも似たような研究成果が報告されており、活性酸素が老化に関係していることはほぼ間違いないようです。
 ここで少し気になることがあります。適度な運動が健康や老化防止によいことは今や常識ですが、活発に運動をして酸素を大量に消費することは活性酸素による老化を促進することにならないか、という疑問です。これについては、次のようなメカニズムが働いていると考えられます。激しい運動をしている選手と一般学生を調べたところ、活性酸素の1つであるスーパーオキサイドを消してしまう酵素、スーパーオキサイドディムスターゼ(SOD)が選手の方でより活性化されていたという報告があります。つまり、運動をすると活性酸素が増えるが、一方で、それに見合って活性酸素に対する防御システムも強化される、ということのようです。
 生命の基本的骨格はすべてDNAに記載されています。老化の道筋もきっとこの中にあるに違いありません。そこで、人の寿命を決定している遺伝子を探す研究が世界的に行われています。早老症ウエルナー症候群という遺伝性の病気があります。20歳代で白髪のしわの多い顔となり、動脈硬化や骨粗しょう症の老化現象が顕著となり、だいたい40歳代で亡くなる病気です。この病気が、DNAの組み替えに関与するDNAヘリカーゼという酵素の異常で起きていることが最近分かりました。
 このほかにも、早老症にはコケーン症候群などいろいろあり、さまざまな遺伝子が老化にかかわっていることが推測されます。早老症という病気があるならば長寿症という病気(?)があってもいいような気もしますが、どうもそれはないようです。自然界はいわば巨大な実験場です。そこで長寿症が出てこないというのだから、遺伝子を操作して人間をより長寿にするということはかなり難しいことなのでしょう。でも、線虫などの下等生物レベルなら、遺伝子を操作して長寿を実現したという研究報告がいくつかあります。
 以上のことから、老化現象は、テロメア、活性酸素、遺伝子などが複雑にからみあって起こっていると考えた方がよさそうです。


目の老化

 腕を伸ばして新聞を読んでいるお年寄りの姿を見ることがよくあります。年を取ると、近くの物が見づらくなります。いわゆる老眼です。目の中のレンズ(水晶体)は周りの筋肉から引っ張られると薄くなり、焦点が遠景に合うようになります。また、逆に引っ張る力を弱めると水晶体自身の弾力で元に戻って分厚くなり、近景に焦点が合います。老化が進むと、水晶体が硬くなり弾力性が失われるので、筋肉の力を弱めても水晶体の収縮が不十分となり、近景に焦点が合わなくなります。これが老眼が起こる理由です。また、厚さを調整する筋肉も衰えてくるので、焦点の調整も難しくなります。水晶体が硬くなる理由は、水晶体を構成しているたんぱく質が、毎日そこを通過する光のせいで、長い時間に少しずつ化学変化を起こして変性するためです。
 水晶体がにごってしまう白内障も、同じ理由で起きる目の老化現象です。これは、透明なプラスチック製品を戸外に出しっぱなしにしておくと、太陽光で劣化して、いつのまにか白くにごり、硬くてもろくなる現象にそっくりです。白内障かどうかは、左右、片目で外の景色を見て、見え方に違いがないかをチェックすることで分かることがあります。白内障については昨今、よい眼内レンズが開発され、外科手術で比較的簡単に治療できるようになりました。
 このような水晶体のたんぱく質の変性を起こす最大の原因は紫外線です。ですから、遠視や白内障を予防するには、日差しの強い日の外出は避けたり、サングラスを着用するなどの紫外線対策が有効です。年をとると老眼や白内障だけでなく、視力の低下、色覚の低下、眼球運動の衰えなどさまざまな面で衰えてきます。これらの老化は神経系がかかわってくるので、その老化防止策は遠視や白内障のように単純ではありません。
 視神経繊維は若いころは150万から170万本あるとされますが、これが毎年5,000本程度のペースで脱落します。視神経繊維は脱落したら再生しないのですが、これくらいのペースだったら死ぬまで日常生活で大きな支障を来すことはないそうです。でも、老人に多い原発緑内障は、高い眼圧が長期間続くことで視神経が壊れる病気ですが、失明することがあるので要注意です。病気が進行していても本人がなかなか気付かないことが多く、早期発見、早期治療が大切です。

耳の老化

 年を取ると耳が遠くなります。一般的には、高い音から聞きづらくなります。この難聴の問題には、単に「音が聞こえづらい」という側面と、「会話がよく聞き取れない」という2つの側面があります。後者の問題には、脳の中枢神経の老化が隠されています。つまり音としては聞こえているが、それが聴覚の伝達経路を伝わる過程で正しく伝わらず、言葉として理解できなくなっているのです。
 こうなると、耳だけの問題というよりは脳の問題になります。難聴になったら、早めに補聴器を使用するとよいとされています。状態がひどくなる前から補聴器を使うことで、早くから操作に慣れるとともに、衰えかけている聴覚の伝達経路を刺激して難聴が進むことを少しでも遅くできるのではないかと考えられるからです。また、最近の補聴器は、単に音を大きくするだけでなく、聴覚の伝達経路の障害で歪んで聞こえる話し言葉を、本人にとってより聞き取りやすいように補正することもできます。
 お年寄りの中には、自分の耳が遠くなっていることをなかなか認めたくなくて、補聴器をつけたがらない人がいます。しかしそうすると、周囲の人は何回も同じことを言わなくてはならないし、大きな声で話さなくてはなりません。このため周囲の人が話しかけることを苦痛と感じるようになり、だんだん会話が減ってしまいます。これでは周囲に迷惑なだけでなく、本人にとってもたいへんに不幸です。
 筋肉や骨は、普段負荷をかけて使っていないとすぐに衰えてきます。プロサッカー選手ですら、けがで長期間入院すると、太股がすぐに細くなったりします。これを廃用性委縮といいます。感覚器だって同じことです。多くの人と活発に会話をして聴覚にいつも刺激を与えていることが、聴覚の老化防止につながるのです。


鼻の老化

 「臭覚が衰えた」といって病院に行くお年寄りはあまりいないでしょうが、臭覚も年とともに衰えます。食事のおいしそうな匂いが分からなくては食欲も減退するし、火事が起きても焦げ臭いのになかなか気付かないなど、日常での不都合は多いものです。臭いの情報は、鼻の臭上皮から臭神経を通って脳に情報が伝わります。つまり、聴覚と同様に臭覚も脳が密接にからんでいます。花や料理や香水など、日常いつも香しい匂いに関心を持つことが、廃用性委縮を防ぐことになります。鼻炎など鼻の病気をできるだけ早期に治療することも大切でしょう。

味覚の老化

 入院患者のなかには、「食事だけが楽しみ」というお年寄りがいます。それが、味が分からなくなっては生きている喜びすらなくなってしまいます。しかし、この味覚も年を取るとともに衰えていきます。原因としては、服用している薬の副作用で味覚異常が起こるケースや、口腔内の病気でだ液の分泌量が低下したため味覚異常が起きるケース、亜鉛の欠乏症などで起きるケースなどがあります。
 同じ亜鉛欠乏症のラットでも、若いラットは味覚異常になりにくいが、老いたラットは味覚異常になりやすいという実験結果もあります。甘い、塩辛い、酸っぱい、苦いという味を感じる、舌にある味蕾の数も加齢とともに減少するという報告もあり、老化は味覚異常を加速させる要員です。でも考えてみると、テレビに出ている料理評論家には高齢者が多い。それは、料理の味を云々するためには、それなりの経験が必要だということなのでしょう。別の見方をすれば、いつも味に関心を持っていれば年をとっても味覚の衰えはかなり抑えられるということをも示しています。
 「友人とのグルメ食べ歩き」などは、よく歩き、よくしゃべり、そしておいしい物を食べるということで、老化防止には絶好の企画でしょう。

皮膚の老化

 皮膚も、熱い、冷たい、痛いなどさまざまな情報をキャッチする重要な感覚器です。皮膚の老化は、だれでも一目で分かる典型的な老化現象で、女性ならだれしも気にするところです。皮膚は老化すると、かさかさに乾燥したり、シミが出たり、しわが寄ったりします。皮脂腺が衰えてあぶらの分泌が減り、汗腺も老化して汗があまり出なくなります。皮膚に深いしわができるのは、真皮の中のコラーゲンが減って、皮膚に弾力性がなくなるためです。このような皮膚の老化に深くかかわっているのが紫外線です。紫外線が強い海で働く漁師さんの顔には、深いしわがきざまれていることが多いものです。そんな人でも、めったに太陽にさらさないお尻はすべすべとした肌を保っています。ですから、日差しの強い日の外出はさけ、外出する時は長袖の服を着たり、帽子をかぶったり、紫外線を遮断するクリームを塗るなどの対策が必要です。まして、海岸での甲羅干しなどは決してしないことです。
人類が初めて経験する人口高齢化現象。わが国ではそのピッチが急速に進み、30年もしないうちに空前のピークを迎える。現在、寝たきりや痴ほうを含め、老化現象や老人病を防ぐ方法についてはさまざまな角度から研究が進められているが、どこまで探究されてきているのか。そもそも人間の老化や痴ほうはどのようなメカニズムで、なぜ起こるのか。肝心の予防や治療法のメドは、どこまで立っているのか。実をいうと老化についてはまだほとんど分かっていないのが実情だが、今回は老化促進の要因として注目を集めている活性酸素と、アルツハイマー病に絞り、基礎老化学や臨床の現場で得た情報を報告しよう。

要因は活性酸素とストレスとする説

 東京大学理学部動物学教室放射線生物学講座の加藤邦彦助手は、比較生物学的視点から老化メカニズムの解明に挑戦している。まず、基礎研究では、老化についてどこまで分かってきているのだろうか。
 「結論を先にいえば、現在世界の学者の間で受け入れられている老化メカニズムの統一的な理論体系は、まだありません。しかし、老化を促進する要因は、活性酸素とストレスが有力です」ヒトはなぜ老いるのか-これは、われわれにとって最大の関心事である。だが実際は、まだほとんど分かっていない。
 「老化メカニズムの解明には、生物の進化(遺伝子変化)の過程で、老化はあまり問題にされなかったことを理解しないと難しい」と、加藤助手は次のように説明する。野性動物は、子孫を残せば一応、種としての役割は終わる。老化して歯や手足が不自由になればエサが取れなくなったり、弱肉強食の世界では他の動物に食べられたりして生き残るのは困難であった。しかも長生きすれば、エサをめぐって子どもとの闘いも起こるだろう。種にとっては「生殖」までが重要であり、その後の一生はたいした問題ではなかったのである。このため、生殖後の老化過程は進化のふるいにかけられなかった。

強烈な酸素の毒性

 老化促進の要因として関心を集めている活性酸素とは、どんなものなのか。その前に、酸素そのものについての説明がいる。酸素は人間だけでなく、ほ乳動物の生命維持には不可欠なものである。
 「ところが、酸素はもともと非常に毒性が強いんです。現在、大気中には20.9%の酸素が含まれているが、その濃度を上げるとどうなるか。ネズミの実験では、酸素濃度を50%に上げて飼育すると、通常三年半の寿命がその半分にまで短縮してしまう。さらに100%純粋な酸素の下に置くと、一週間以内に絶命してしまった。酸素の毒は、それほど強烈です。人間だって100%酸素下では、恐らく約半日で肺などに障害が出てくる。さらに吸い続ければ、確実に死ぬでしょう」酸素濃度を高めると、健康にもプラスになるのではないか。そう考えるのが普通である。ところが、加藤助手は「かつて高濃度の酸素が入った保育器で起きた赤ちゃんの未熟児網膜症、あれが典型的な例。大きな社会問題になったので覚えているでしょう」と、こちらの理解を促す。
 「その毒性の本体こそが、非常に反応性に富んだ危険分子の一種である活性酸素です。大体、呼吸で消費する酸素の約2%が体内で活性酸素になり、細胞膜や遺伝子、酵素を傷つけ、いためつけるので″酸素毒″とも呼ばれている」と、加藤助手。活性酸素をもっと難しくいうと、スーパーオキサイドラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素などの総称。細胞の不飽和脂肪酸を酸化、有害な過酸化脂質を作り出す。この″脂肪のサビ″ともいえる過酸化脂質が害を与え、その蓄積が結果的に老化を促進するという見方である。
 この活性酸素に着目、それが老化を促進し、寿命にも深く関与していることを明らかにしたのは、基礎老化学の研究の成果である。加藤助手が1977年から2年間留学、指導を受けた米国ボルティモア市にある国立老年学研究センターのカトラー博士も、活性酸素と老化の関係に早くから注目していた一人である。
 「ごく最近では、活性酸素ががん、脳卒中、糖尿病、心筋こうそく、アトピー性皮膚炎、リウマチなどの数多くの病気にも関連していることが分かってきた。今や医学、薬学の最前線では『風邪は万病のもと』ならぬ『活性酸素は万病のもと』というのが共通認識になっている。特に、がん研究の専門家が高い関心を示していますね」

効用著しいベータカロチン

 となると、この活性酸素の発生を抑えたり、コントロールすることができれば、老化やがんを予防することになるが、どうか。
 「人間を含め、呼吸しなければ生きていけない動物は、活性酸素の毒に対する七重、八重の制御システムを備えている。それでも防ぎ切れなくなって障害が出てくるわけだから、日ごろから防衛力の増強、維持に努めることと、不必要に活性酸素の発生量を増やさないことが肝心です」と、加藤助手は次のような防衛力増強のための方策を勧める。
 酸素毒を水などに分解してしまうSODという酵素や、抗酸化剤と呼ばれるビタミンC、ビタミンE、さらにニンジンやカボチャ、トマトなど緑黄色野菜に含まれるベータ(β)カロチンなどを摂取することだ。
 「このうちでも特に、βカロチンが活性酸素をやっつける力は強烈で、最近ではβカロチンの血中濃度が高い人は発がん率も低いという調査結果も出た。βカロチンは健康食品、がん予防食品としても世界中で脚光を浴び始めている。基礎老化研究には、栄養学的アプローチが非常に重要になってくるでしょう」このように活性酸素が老化との兼ね合いで出てくる場合は、その毒性が老化を促進する″極悪人″として扱われる。しかし「活性酸素で厄介なのは、確かに毒ではあるが、同時に薬としても作用するということです。体内にがん細胞や病原菌などの異物が侵入してきた場合、その強力な毒で排除し、体を守っている。敵に回すと怖いけど、味方に付けたらこれほど頼もしいものはない。それが活性酸素の素顔なんです」とも。
 老化促進のもう一つの因子、ストレスについてはどうか。加藤助手は「ストレスは、われわれが考えていた以上に怖い。現代では成人病の元凶といえるんじゃないか。高血圧、動脈硬化、糖尿病を高進し、がんや感染症に対する抵抗力も弱くする。老年痴ほうとストレスの関連をいう人もいる」と、ストレスが人間の健康に与える悪影響の大きさを強調している。

長寿が生んだアルツハイマー病

 現代医学、科学の進歩は、われわれに長寿をもたらした。しかし、命を永らえたことがすべて幸福につながっているかといえば、もちろんそうではない。さまざまな老人病や老化現象が、長い老後生活の中から新たな難題として生まれてきた。その代表の一つが、老年期痴ほうであろう。
 老年期の痴ほうには、大ざっばにいって脳こうそく、脳出血などを主な原因とする脳血管性痴ほうと、アルツハイマー病がある。65歳以上の日本人の約6%に痴ほうがあり、そのうち30%前後がアルツハイマー病と推定されている。ここで問題にしたいのは、今や老人ぼけの代名詞になった感のあるアルツハイマー病である。
 このアルツハイマー病については、従来アルツハイマー型痴ほうとかアルツハイマー型老年痴ほうなどとも呼ばれてきた。事実、この二つは発症年齢などに違いがあり、厳密には別の病気である。だが、専門家の間では一応アルツハイマー病に統一されている。
 肝心のアルツハイマー病は、原因不明のまま脳の委縮と変形が徐々に進行し、完治しないという難病だ。「厄介なのは、高齢になるほどかかる頻度が高くなり、特に80歳を過ぎると急激に増えることだ」と、この6月まで東京都老人総合研究所副所長だった柄沢昭秀・日本社会事業大学教授(老年精神医学)。気になるのは、わが国の高齢化は今後さらに急ピッチで進むことである。先ごろ日本大学人口研究所が発表した推計によると、現在約百万人の痴ほう老人は、高齢化のピークに達する2020年ごろには322万人にまで膨れ上がる。
 「アルツハイマー病についての最近の研究成果には、目を見張るものがある。患者の脳内に蓄積するベータ(β)タンパク質の研究が進み、遺伝学的に単一疾患ではなく、症候群であることが分かってきた。原因になる遺伝子の一つも、五年以内に突き止められるでしょう」
 このように、アルツハイマー病の原因解明について明るい展望を語るのは、東京大学医学部脳研究施設の井原康夫教授(脳病理学)。東京都老人総合研究所の臨床第2生理室長から教授になり、アルツハイマー病の患者の脳内の蓄積物質の生化学的解析を武器に、この難病の原因を追究している。
 井原教授によると、ヒトの脳には、生まれながらに数億個といわれる神経細胞がある。細胞は増殖することなく、加齢とともに死滅する。特に四十歳ごろからは、一日に数万個単位で減っていく。アルツハイマー病の患者の場合は、その減り方が著しいのが特徴だ。脳細胞の急激な減少により、この病気の特色である脳の委縮が全体的に現れ、スカスカになってしまう。
 「その縮んだ脳の中に、解明の手掛かりになる貴重な遺留品が残されている」
 それが神経原線維変化(PHF)、老人斑と呼ばれる二種類の病変である。老人斑は、いわば脳内の染みで、その中心に細い線維の塊のアミロイドが大量に蓄積する。そしてPHFとアミロイドの主成分が、それぞれβ、タウという特殊タンパク質であること、最初にβが蓄積し、タウはかなり遅れてたまることが突き止められた。

遺伝因子説に朗報続く

 ところで、アルツハイマー病の原因解明も明るい光が見えてきたとはいえ、まだ決定打はない。これまでに、さまざまなアプローチによる原因説が打ち出されてきた。例えば、神経伝達物質の一種であるアセチルコリン減少説、感染説、アルミニウム毒害説、それに遺伝因子説などなど。そして現在、基礎医学の最新の成果は、遺伝性アルツハイマー病を研究するグループからもたらされたものである。
 六十五歳以下の初老期に発症するアルツハイマー病は従来、遺伝的背景がつよいとされてきた。それが昨年11月、米国のシェレンベルクらが初老期発症の遺伝性アルツハイマー病の大部分は、21番目という予想に反して14番目の染色体に乗っていることを決定的に明らかにした。
 また、初老期に発症する一部のものは、老人斑の核になっているβアミロイドの前駆体タンパク質(APP)を作る遺伝子の変異によること、65歳以上の老年期に発症するものは19番目の染色体とかなり関連があることなどが確認されている。遺伝子の異常については、21番目の染色体が1個多いために発症するダウン症候群との関連で論じられてきた。精神薄弱の一種であるダウン症では、40歳以上になると、β、タウタンパク質が蓄積するなど、アルツハイマー病と同じ状態になることが知られている。
 さて、最も気になる今後の展望については、どうか。前述の研究成果の外にも、APP遺伝子の変異で起こる家族性アルツハイマー病の一部では、βタンパク質の生産が高いことが判明している。それらのことから、βタンパク質をどの細胞が、どのように多く生産するかなどの研究が各国で進んでいるという。

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