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ノイローゼ君「やあやあ、皆さんこんにちわ!とか何とかいって、愛きょうを振りまいたところで、僕は皆さんに嫌われているノイローゼです。別名、“神経症”--- お分かりですね。ところで、最近の日本は、長寿社会の到来といって、世をあげて、“健康老人万歳”と叫んでいるようですが、どうも、人間様は、僕の存在の怖(こわ)さをまだご存知ないようですね。」

 「えっ、何?そんなものわしには関係ないって!?おやおや、強がりをおっしゃって・・・。そんなあなたにも、僕はすきあらばアタックしようとしているんですよ。それじゃまず、僕のプロフィールから紹介しましょう。ノイローゼとは、日本語でいえば、「神経症」。要するに心のトラブルで始まる“心の病”なんです。それがまあ、最近、老年期を迎えた人間様に増えてきているんです。」

 「その理由は、どうせ年をとれば、誰だって愚痴をこぼしたり、無気力になったり、悲観したり、不安や体の不調を訴えることが多少あってもそれが当り前 ‐‐‐。だから、本人も回りの家族も実際には心の病に侵されていることに気付かないでいることが多いんです。」

 「そういったこともあって、老年期の神経症の実態と実数はなかなかつかめていません。今後、高齢者が増えていけばいくほど、その人数も増えていくでしょう。」

 「では、神経症の種類、つまり、僕の仲間を紹介しましょう。」

 ノイローゼ君「まず、神経症“ビッグ3”の一つが、不安神経症。これといって心当りがないのに、漠然とした不安が絶えず頭にあったりします。また、今にも死ぬのではないかといった激しい不安が、息切れ、冷や汗、動悸、めまいなどの自律神経症状を伴う身体的症状とともに発作的に起こってくる、最もノイローゼらしいノイローゼです。」

 ノイローゼ君「そして、不安発作が、例えば外出先で起こったら、誰かが傍(そば)にいてくれないとそれこそ大変だと考えるんです。いつまた起きるか分からない不安が先走るので、家にいても心配で心配で落着かず、ますます外出できなくなるという代物です。」

 ノイローゼ君「神経症“ビッグ3”の二つめが、心気症。これは、内科的には何ら異常がないのに、からだの病気があるのではないかと、あれこれ心配し、苦しんでいる・・・。えっ、それなら、私もそんな状態にあるって?それはもう、大いに歓迎します。とか何とか、憎らしいことをいうんで、やっぱり僕は嫌われるのかな?」

 ノイローゼ君「例えば、あなたは、全身の疲労感だけでなく、頭が痛い、眠れないといっては、よく仕事を休んだりしているでしょ? それに、病院で何回か検査をしても何の異常もないのに、おかしいといっては他人様からみれば無益な医者通いをしているでしょ?でも本人はいたって真剣なんですよね!これは、心気症の何よりの証明です。何しろ、心気症は、老年期の神経症のうちで、特に多いタイプですからね!」

 ノイローゼ君「神経症“ビッグ3”の三つめは、抑うつ神経症。これは、甚だしい取り越し苦労や、物事にくよくよしてよけいな心配をしたり、依存心が強く、周囲に対して申し訳ない気持が起きたりします。典型的な、“うつ病”に比べると症状は軽く、うつ病にみられる抑制という心身の動きにブレーキがかかる現象や、不眠や便秘といった自律神経症状を認めにくく、かわってあれこれ迷うといった葛藤のみられるものです。ときには、自殺まで考えるようなこともあるんですよ!」

 ノイローゼ君「また、老年期は、青年期のものと違って、不安神経症、心気症、抑うつ状態が純粋な型で現れることはむしろ少なく、いくつかのタイプが組み合わさって現れます。たがら、老年期の神経症は、よく症状を観察しないと鑑別しにくいっていうんですから、厄介ですね!体の病気を持った人が、さらにノイローゼに落ち入ることも、よくあるんです。」

 ノイローゼ君「以上の“ビッグ3”に続くのが、強迫神経症。これも僕の仲間ですよ。ガスの元栓を締めたかな?戸締りはしたかな?といったことは普通の人間様ではよくあることですが、それをひどく気にして、日常生活に支障をきたすようになれば、これはもう、強迫神経症!払いのけようとすると、かえって気になってくる強迫観念とか、理屈に合わないと知りながら、やらずにはいられなくなる強迫行為が現れるんですね。」

 ノイローゼ君「『婦系図』で有名な泉鏡花が尾崎紅葉に師事していたころ、師匠の書いた原稿を投函しに行って、本当にポストに入れたかどうかが気になり、集配に来るまてじっと待っていたという・・・、これは、強迫観念のうちの確認癖という行為なんです。」

 ノイローゼ君「それから、かよわい女性をターゲットとしている、“ヒステリー”も僕らの仲間です。ヒステリーは女性に限らず、男性にだって遠慮なく襲いますよ。ヒステリーの症状は、からだの病気もないのに、心のトラブルで失神したり、手足が麻ひしたり、ひどいときにはけいれんを起こしたり、また、もうろう状態となったり、まことにドラマチックで派手な振舞いを演じてくれるので、われながらびっくりいたします。以上、ざっと僕らの仲間の代表を紹介してきました。」

 ノイローゼ君「じゃ、なぜ人間は神経症になるのかって?老年期では、次のようなことが主な原因といえましょう。」

 ノイローゼ君「まず、現代の人間社会は暮らしが複雑多様化しています。特に、定年退職後は、社会的地位が下る、対人関係も少なくなる、収入も減るなど、精神的に動揺が起こるので、僕らにとっては絶好のチャンス!その上からだが衰える、連れ合いとの死別、子どもとの別居、家族との仲たがいなど、この時期にはいろいろな環境的変化が起こることが多いので、僕らの攻略作戦はまんまと成功するという訳です。」

 ノイローゼ君「またまたうれしいことには、老年期の人間様は、病気やけがなどで、自分の身の回りのことができなくなったり、親しい人との接触が断たれて、ますます孤立化していく・・・。そうした身体的・心理的な挫折が訪れた時、これまた、僕らが忍び込む絶好のチャンスとなるのです。お分かりですかな?」

 ノイローゼ君「“人間は一本の葦(あし)にすぎない。自然の中で、もっとも弱いものである。”パスカルは、よくぞいってくれました。」

 主婦「ねえ、ねえ、聴いた?ふざけてるわね。そんな勝手なこと、いわせておいていいのー?でも、そういえば、ちょっと気になることがあるわ。そう、うちのお爺(じい)ちゃん最近、いらいらして、意味もないのに私たちに当たり散らすの。やっぱり神経症かしら?心配になってきたわ!」

 主婦「そこで、私は、病院の精神科を訪ねることにしました。」

 主婦「・・・というわけで先生、うちのお爺ちゃんも神経症にかかったんでしょうか?」

 医師「一度診察しないと分かりませんが、そういう症状があれば神経症が強く疑われますね!」

 医師「一般に神経症の原因として考えられるのが環境の変化ですね。奥さんに先立たれたことによって、身の回りの処理が何かと思うようにいかなくなったり、親しくしていた友人が引越したりと、段々離れていくような不安感から、いらいらして、家族に当たり散らすようになるんです。」

 主婦「そうですか。それで、その神経症を治すには、どんな処置がなされるんですか?」

 医師「その治療法で一番多いのが、精神療法です。これは患者に対する暖かい理解と辛抱強い働きかけが基本となります。つまり、説得に走るより、本人の訴えを十分聞きとどけることです。そして、その面接を通して、本人の役割り、生きがい、張り合いを持たせるようにしたり、環境の改善などが必要となります。」

 医師「精神療法と併用されるのが、薬物療法ですね。この療法では、各種の抗不安薬や抗うつ薬が用いられるのですが、老年期は、特に代謝機能が低下していたり、合併症や副作用が多かったり、薬の効きめに個人差があるといった理由から、薬の選択や量に細かな配慮がなされています。」

 主婦「それで、神経症は治るのですか?」

 医師「ええ、精神科医のもとで適切な治療を受ければ治ります。特に軽い神経症の場合は、先程も述べたように周囲の人の暖かい配慮で十分治療できます。ですから、家族の人達の受け入れ、支えが何より大切です。」

 医師「ではここで、神経症のチェックポイントを紹介しましょう。」

 医師「はじめに家族からみたチェック・ポイントは、
  ・医師に大丈夫といわれても、病気のことを心配して、あれこれと悩みを訴える
  ・いらいらしたり、動悸を訴えて、しきりに不安がる

  ・気分が沈み、ゆううつそうで、判断や動作が、とどこおりがちになる
  ・汚れや忘れ物など、あることに妙にこだわり、何度でも確認せずにはいられなくなる

  ・感情が不安定になり、極度に子どもっぽくなったり、甘えたり、責任を回避したりするようになる
  ・気分や心の悩みから、日常生活にも支障をきたすようになる。」

 医師「また、本人自身のチェック・ポイントとしては、ごらんのようなものがあります。

・不安になりやすい
・いらいらして仕方ない
・何となくからだの調子が悪い
・物事が気になって仕方がない
・自分の体力や能力に自信がもてなくなる
・仕事が手につかなくなる
・心配事があって、よく眠れない
・何かにつけて、ストレスを感じ、元気がでない
・気分が沈みがちとなる
・物事に興味がわかず、集中できない

以上のようなことが、重なったときには、精神科医の診察を受けるようにしましょう。」

 主婦「それから、神経症は予防も大切なんでしょう?」

 医師「そうなんです。神経症になりやすい原因を前もってとらえ、早目に手を打っておくことが予防の大事なポイントとなります。」

 医師「第一に、働き過ぎは避けることです。適当な労働と運動、そして規則正しい生活をすることですね。また、心のリズムを保つために、家庭や職場の人間関係にしこりを作らない努力が必要でしょう。」

 医師「第二は、日常の行動範囲を家の外へ広げ、対人関係を広くすることです。新しい友人を作ったり、老人クラブやボランティアの活動に積極的に参加すれば、普段の心配事や不安なんか吹きとび、いつも穏やかな気持になれます。」

 医師「第三にストレス解消法を身に付けることです。少しでも時間を見付けて、心身をリラックスさせ、ストレスを受けることがあっても、それをうまく処理していけるようにしたいものです。」

 医師「さらに大切なことは、自らの“生きがい”を開拓することです。自分の好きな趣味や娯楽を生かすのもよいし、自然に親しみ、自然の恵みを一杯受けるのも良いでしょう。そうした人間らしい暮らし方を見付け出すことが、何よりの心の健康法です。」

 主婦「具合いの悪かったお爺ちゃんを精神科のお医者さんに診てもらい、しばらく治療を続けた結果、おかげさまで元気になり、以前の明るさを取り戻してくれました。」

 主婦「私たちもいつかは老人になる運命にあります。私たちが実りある老年期を迎えるためには、若い頃から何でも話し合える仲の良い友人、知人をもち、最も信頼できる家族のみんなとも仲良くし、親戚ともうまく付き合って、楽しく豊かな日々を過ごそうではありませんか!」


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長寿者像については、
・3人に2人は自宅で生活している
・7人に1人は自分の歯がある、などの他、両親の死亡年齢をみると、両親とも死亡年齢、70歳以上が約4割もみられるなど、いかに長寿の家系であったかがわかります。

 この方々の長寿のための心がけについては、最も多かったのが「食事に気をつけていた」ということで、次に、「物事にこだわらないようにしていた」、「規則正しい生活をするように努めた」、などと続いています。  

 この結果からもわかるように、長生きをするためには食事に気をつけることが、とても大切な要素になっています。調査からはなれて、実際に長生きしている高齢者の食生活について考えてみることにしましょう。

 ここは千葉県鴨川市です。温暖な気候と豊かな自然に恵まれたこの土地では、高齢でも元気な方がたくさん生活しています。

 「生きている限り体を鍛えなければだめ」というの長寿者中村さんは、1週間に1回、地域の皆さんに体操を教えたり、バレーボールを楽しんだりと、軽快に体を動かしています。

 昔は大食漢だった中村さんですが、現在では朝、昼、晩ともにご飯は軽く1杯だけ。好き嫌いはありませんが、家族そろってのにぎやかな夕食には必ず魚料理を食べています。

 明治32年生まれで今年95歳の星野さんは、自分の身のまわりのことは、もちろん自分でなさっています。

 約1時間の道のりを歩いて、福祉センターの鉱泉浴場に通うのを日課にしています。

 「友達をたくさん作って、クヨクヨ考え込まず、1日悩んだら次の日は笑ってなけりゃ」と明るい星野さんです。

 息子さん家族と楽しく食事をとる星野さんも、ご飯は3食ともに軽く1杯だけ。それに魚、野菜、海草、牛乳、納豆、と実にバランスのよいお食事をされています。また、卵を1日に1個は必ず食べています。

 このように元気いっぱいのお年寄りが多い理由を、鴨川市の管理栄養士・山本さんに伺ってみました。

 管理栄養士さん「鴨川はですね、この気温、黒潮というとてもあたたかな海流が流れておりまして、鴨川市の平均気温が17℃~18℃なんですね。真冬でも菜の花が満開の状態なんです」

 管理栄養士さん「魚がとっても沢山とれますし、新鮮でおいしいですよね。ちょっと街中をはずれていきますと田園風景が広がりますし、お米も沢山とれますし、お野菜も新鮮ですよね。で、海のものと山のものとで両方の幸をとり入れて、とてもバランスのいいお食事をなさっているように、私には思うんですけれども一一」

 管理栄養士さん「背の青い魚、例えばいわしですとか、あじですとか、さばですとか、さんまといった、そういうようなお魚が沢山とれます。わかめとか、それからひじきのようなものもとれまして、海草でもおさしみができたりとか、煮ものができたりとかいうことで、沢山の料理を、みなさんそれを召し上がっているようです」

 管理栄養士さん「自分の庭先でお野菜を作っていますから、朝とれたきゅうりとか、トマトとか、なすでもそうなんですが、それらのとれたてのお野菜を朝そのまま食卓にのるという、とっても新鮮さが売りものになっています」

 管理栄養士さん「この鴨川市は酪農の発祥の地でもあるんですね。市内にも沢山の乳牛が飼われているんですけれども、いま病気とかでもとても騒がれていますが、骨粗鬆症の問題についてですが、牛乳をコップに1杯、l日に必ず飲みましょうということで、カルシウム摂取についても、すすめているところです」

 管理栄養士さん「元気なシルバーを見ていますと、ストレスがたまっていないのかな、なんて思うことも沢山ありましてね、物事に対しても好奇心が旺盛で、気力がとってもあるなあと思います。よく房州の人問は非常に皆さんゆったりとしていらっしゃって、人間これまでみてきた鴨川市のように、若さを保つための食事にはいくつかのポイントがあります。今回の100歳老人の調査項目『中年以降の食事のとり方』の結果と似ている部分が多くありますので、次に紹介していきましょう。

 まず、多くの方々が1日3回規則正しく食べています。毎日同じ時刻に食事をすることによって、体に一定のリズムができます。この規則正しいリズムが食物の消化吸収や栄養素の効果的な利用を促し、健康によい影響を与えています。

 次に、腹八分目を心がけている人も多くいます。高齢者の体は若い人に比べエネルギーの必要量が減っています。いろいろな食品を食べるのはよいことですが、食べすぎないように気を付けましょう。満腹になるまで食べてしまうと胃や腸に負担をかけ、時にはお腹をこわしてしまいます。ことわざにもあるように『腹八分目』が一番です。

 今も家族と住んでいる方が多く、食事も家族揃って楽しく食べています。どんな食事でも大勢で食べるとおいしく食べられます。

 そして、ビタミンやミネラルを多く含む緑や黄色の濃い野菜を食べるようにしていた、

 良質のたんぱく質のもとになる魚、肉、卵などを食べるようにしていた、

 豆腐をはじめ、大豆製品は、魚や肉と同じように良質のたんぱく質のもとになります。これらを食べるようにしていた、と答えた人も大勢います。

 ミネラルを多く含む海草類を食べるように心がけていた、

 日本人に不足しがちなカルシウムを多く含む牛乳や乳製品もとるようにしていたなど、健全な食生活をしています。
 
 このように、幅広くいろいろな食品をまんべんなく食べているという生活ぶりが伺えます。したがって、栄養のバランスがとれていると考えられ、まさに正しい食生活のお手本が示されています。

 では、健康な食事の基本について、ここで簡単にまとめてみましょう。

 健康な食事の基本は何といっても、主食、主菜、副菜を組合せて、栄養のバランスのとれた食事にすることです。

 毎日食事をする際、組合せが良いかチェックしてみましょう。ごはんと肉や魚、豆腐などの主なおかず、それに副菜としては汁物、煮物、和え物、サラダなど、いろいろあります。

 ここでは私たちになじみの深い副菜の一つである味噌汁をとり上げてみました。実沢山の味噌汁は、

 野菜が豊富にとれるのがいいですね。また、味噌汁もわが家風に変えてみる、例えば材料など、この通りでなくともいいですし、味付なども味噌の種類を変えたり、生妻を入れたりなど、と変化をつけることができます。

 では最後に、長寿の秘けつをまとめることにしましょう。

 まず、物事にこだわらない、ゆとりのある生活が長生きにつながります。いつまでもクヨクヨと思い悩んでいたり、イライラしていると憂うつになるばかりか、身体の病気を引き起こす原因にもなります。今日起こったことは今日で忘れ、明日は新しい気持で迎えましょう。

 若さを保つためには、好ききらいをせず、3食規則正しく食べ、しかも、腹八分目で暴飲暴食をしない、家族や友人と食事を楽しむ生活をしましょう。食べることは私たちの健康な生活を営む上での基礎となります。

 3度の食事、適度な運動、充分な睡眠と休息など生活のリズムを整え、規則正しい生活を送りましょう。

 マイペースを心掛けましょう。自分の好きなことを思いのまま楽しみましょう。その他、よく動く、働くといったことも大切なことのようです。

 健康で長生きしている人の一生をふり返ってみると、乳幼児期、成長期、成人期、老年期といった人生の各時期を健康的に生活してきてこそ、100歳といった今日があるのです。

 100歳以上を生きている高齢者からは、日頃の心の持ち方や、食生活の基本をあらためて学ぶことができました。いつまでも健康に長生きしたい、それは私たちの願いです。

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老年期の生活を明るく実りのあるものにするためには、まず、毎日の食生活が基礎となります。

 老年期の食生活を考えるにあたっては、いろいろな点で成長期や成年期の場合と違った特性があります。そのことを考慮した上で、老年期の食生活について、留意点をまとめてみましょう。

 老年期に入ってから若さをとり戻すことはとても困難ですが、20代~30代といった若いときから、食生活をはじめ生活全般に注意を払うことによって、老化を遅らせることは十分可能なことです。


また、老年期に入ってからも、毎日の食生活とともに適度な運動を行えば、体の機能の低下を少しでも遅らせることができて、いつまでも元気で暮らすことができます。

 年をとっても食欲はさほど衰えず、食べる楽しみの中に生きる喜びを持つ人も増えています。食事を直接作る主婦を初め、家族がこうした立場をよく理解したうえで、栄養的にも味付けにも、思いやりのある食生活を考えてあげましょう。

 老年になると、次第に歯が抜け、総入れ歯になるということなどもあって、そしゃく力が低下しがちです。

 また、高血圧、心臓病などいわゆる成人病(生活習慣病)や慢性便秘といった悩みを持つ人も少なくありません。老年期の食生活は、こうした体の機能の低下や健康状態に併せて十分配慮することが大切です。

 老年期に限らず、すべての年代に共通することですが、まず食生活における栄養土のポイントについてご説明いたしましょう。

 健康状態や老化の程度については、同じ年齢でも個人差が表われるため、一律に論じるわけにはいきません。しかし、栄養素の摂取や食品の摂取については、少なくとも次のことに配慮したいものです。

 老年期はその人の日常生活の内容によってかなり個人差はありますがエネルギーの所要量は壮年期より少なくて足りるようになります。


 エネルギーのとり過ぎや運動不足は、肥満の原因になるため、エネルギーについては、特に過不足にならないよう気を付けましょう。

 しかし、老人になっても減らしてはいけない栄養素がいくつかあります。まず、たん白質です。老年期に入ると細胞成分や細胞数が減少していくのでたん白質はとても大切です。

 白身の魚、卵、豆腐など大豆製品、脂身のない肉なとは、若い時と同じ位とりたいものです。

 また、カルシウムもそうです。年をとると、女性に多いといわれる骨粗鬆症という、骨折しやすい病気が増えてきます。

 牛乳、乳製品、海草、小魚などもできるだけとりましょう。


 それから、ビタミン類やミネラルなどもやぱり減らさずにとらなければなりません。

 野菜や果物は、このほかに便秘を予防する働きもあります。

 食物繊維を進んでとるように努めましょう。

「いも」類にも繊維が多く、さつまいもにはビタミンCも比較的多く含まれています。

 次に調理士のポイントについて考えてみましょう。老年期に入ると入れ歯の人が多くなります。入れ歯のそしゃく力は、健全な歯をもっていた時よりもかなり低下します。ですから、食べやすくするため、次のような配慮が必要です。

 固めの食品は、かくし包丁を入れたり、小さく切って柔らかく煮たりします。

 肉は、うす切りにしたものや、ひき肉などを使い、食べやすくします。また、煮過ぎると固くなるので注意しましょう。

 野菜類は時間をかけて、ゆっくり煮込みます。

 妙め物のときは、野菜は茹でてから妙めるようにし、植物油を使いましょう。

 うす塩でもおいしく食べられるように、胡麻、くるみ、ピーナツ、レモン汁などの和え衣をたっぷり用いましょう。

 てんぷらには、必らず天つゆに大根おろしを添えましょう。そのほかフライなど表面の衣が固くて食べにくいときには、だし汁でさっと煮たものを食膳に出しましょう。

 飲み込みがうまくできず、むせるようなときは、汁物にかたくり粉を入れて、とろ味を付けることも効果があります。とろ味を付けた汁物は熱過ぎないよう気を付けましょう。

 老年期になると、生理的な味覚の低下と入れ歯を使うことによる、”味覚の鈍化”がみられるようになり、味付けが濃くなりがちです。そこで、食塩をとり過ぎないように、次のような配慮をしましょう。


 鮮度のよいもの、旬のものを利用して、その持ち味でおいしく食べられるように心がけましょう。

 和えものには胡麻、焼きものには適量のしょう油に、みりんなどを上手に使って、香ばしさを出すようにしましょう。

 酸味のある食品、たとえばレモンやゆず、かぼす、すだち、ヨーグルトなどを和えもの、焼きものに利用しましょう。

 香りの強い食品、例えばねぎ、みつ葉、生姜、のり、しそ、きのこなどを上手に生かし、おいしく食べられる工夫をいたしましょう。

 さらに、心理的な面で満足してもらえるような演出を心がけましょう。

 食事の不満は、生活全体の不満となり、感情的な不安定を招いたりします。

 食事が単調になることも気分的な満足感を損ないます。主食に主菜や副菜をうまくとり合わせて、食事に変化をもたせましょう。

 食器についても、食べものの色との組み合わせなどを考えるとよいでしょう。

 老年者の食事というと、すぐにコレステロールの少ないものや塩分の制限といったことにこだわりがちですが、これも行き過ぎるとかえってマイナスとなる場合があります。なお、高齢になっても糖尿病や痛風などがない場合は、あまり細かい栄養学的な注意よりもむしろ、食欲不振をきたさないような配慮が大切でしょう。いつまでも健康で長生きできるよう、家族みんなでたのしい食生活を心がけましょう。


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まず第一の、からだの健康について、考えてみましょう。

 国や地方自治体は、国民の健康を守るために、いろいろな事業を行っております。

 しかしやはり、一人一人が自分で自分を管理することが肝心です。
日頃の自分の健康状態をよく知っておき、それにふさわしい生活を送ることが必要です。

 ただし、そうはいっても自己流の健康法で臨むことは危険が少なくありません。
 定期的に健康診断をして、医師や保健婦さんから、正しい指導を受けましょう。

 一般に老人は若者よりも病気を持っている割合が多いことはやむを得ません。
 しかし、65歳以上でも1年間、まったく床に就かなかった人は半数以上ですし、せいぜい10日以内の短期間しか床に就くことがなかった人を合わせますと、80%を越える程で、元気な老人は多いのです。

 それに、もし病気を持っているとしても決して心配することはありません。
 高血圧や心臓病、糖尿病、肝炎などにかかっていたとしても、それなりに気を付ければ立派に暮すことができます。
 一病息災という言葉がありますが、何か一つの病気を持っているとよくからだに気を付けるため、病気がなく気を許している人よりかえって長生きするということです。


 第二は心の健康です。

 人間は、年をとるとともに体が衰え、それに伴って精神機能も低下するという、いわゆる老化現象が現れますが、これは、誰にでも起こることです。
 しかし、老年期には高齢化に伴う人生課題や生活課題がありますから、精神的に不健康な状態になることも考えておかなければならず、実際に精神障害の起こることも少なくありません。

 たとえば、60歳代では定年になって社会から引退することによって生ずる挫折感や将来の生活への不安がみられたり、70歳代では死への不安などがみられることがあります。

 心の不安については、専門の医師などにより的確に状態を把握してもらい、その結果に基づく適正な指導を受ければ回復して安らぎを得られるものです。

 絵を描くとか、音楽を愛好するとかの趣味や、旅行、スポーツなどレジャーによって、不安を解消することが広く行われており、これもなかなか有効です。

 しかし、誰でも、いつでも共通してできることは信頼できる人を身近に持つことです。
 配偶者や家族、友人などはもちろんのこと、医師や保健婦と親しくして、いろいろ相談することもよい方法です。

 このように、いろいろな人たちと心措きなく会話を交わすことは、精神的な緊張をほぐし、心の安らぎが得られるものです。

 このことは、ひいては社会人としての健康という第三の健康につながるものです。

 社会人としての健康の基本は、家に閉じこもっていないということです。
 家族以外の人とも進んで付き合うことが大切です。
 積極的に外へ出て、地域の人たちとの結び付きを図るよう心がけましょう。

 そして、街では必ず誰かがあなたを必要としているはずです。
 すぐにでもできることは、お互いの助け合いです。毎日の生活で、身近な者同志が、暖かい手を差し伸べ合うことを、沢山の人が望んでいる のです。
 例えば、年上の人の話し相手になったり、年下の人の相談相手になったりするなどです。

 ボランティア活動はそのためのよい方法の一つで、日本の高齢者の約15%がいま参加しています。

 また、そのための団体や組織に加わるのが早道でもあり、町内会、自治会、老人クラブなどはボランティア活動のチャンスを多く持っていま す。保健婦や、社会教育関係の人と相談すれば、もっと多くの団体などがあると思います。

 とにかく、積極的に人との交流を持つことが大切です。外国でも高齢者は多くのグループ活動をしています。

 特に欧米では宗教活動や、社交的集いが盛んに行われ、これらを通じてボランティア活動も盛んです。

 活動の内容はいろいろありますが、わが国では、一般の人たちに対する地域活動、児童や青少年に対する地域活動、老人に対する地域活動な どが多く、

 そのほか、養護施設や障害者に対するボランティア活動などがあり、最近はリサイクル運動まであります。

 いま、65歳以上の人を調べますと、寝たきり老人が25万人、一人暮らしの老人が98万人にも上ります。
 これらの人たちは、何らかの形で援助を必要としているのです。

 また、ボランティア活動をしようとする動機は、社会的に何か役に立ちたいから、というのが約4割と圧倒的に多いのです。


 しかし、その結果は、人の役に立つと同時に、自分自身のためにもなるのです。
 どのようなことが自分のためによかったかといいますと、約3割の人が、思いやりの気持が深まった、友達を得ることができた、共通の話題 ができたと、答えていますし、

 ほかに、人間性が豊かになった、生活に充実感ができた、知識や技能が身について、健康になったという人も多いのです。

人間は、年をとっても創造力は決して衰えるものではありません。

 先頃開講された放送大学に、多くの高年齢の人が参加しましたが、新しさを求める若い心は常に養いたいものです。新たなものを発見する喜 びという、広い意味での創造性を大切にしましょう。知識や技能が身に付いたという喜びは端的にこれを物語っているわけです。

 人世において、常に新鮮な関わりを持つことは創造性を高めることになります。

 高齢者の安らかな生活が保障されることはもちろん必要ですが、さらに積極的に創造活動に関わることによって、充実した人生を発見するこ とができるというものです。

 国や地方自治体は、こうした方向に沿っていろいろな施策を講じております。
 芸能、芸術などの趣味や技能、知識などの能力の教室から、進んで国際性の啓蒙まで巾広く行われているところもあります。
 また、ボランティア養成講座を開いたり、相談員を公民館に派遣している所もあります。


 更に、経験や技能を生かす工夫もなされています。
 このように見てきますと、高齢化社会を明るいものにするという将来像が感じられるでしょう。

 高齢者の割合が多くなるこれからの我が国では、このように充実感を持って活動する老人が増えれば増えるほど、今までにない住みよく明る い社会ができ上るでしょう。

 これから、ますます高齢化が進む日本の社会を、生き生きとしたものにするよう、みんなで力を合わせたいものです。

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生きがいとは、人を生きることに向かわせる動機づけのことと考えられます。高齢者の実際の生きがいは非常に多様です。生活価値類型による分析では、仕事や遊び、学習など生活全般に生きがいを有する積極志向型、何らかのスポーツや運動に大きな生きがいをもつスポーツ志向型、人と異なった才能や能力をみがき育てることに生きがいをもつ個性化型、自分らしく生きることを重視する自己充足型、気ままにのんびり暮らすことに生きがいを有する人生享受型、さらに出世志向の強い出世志向型などに分けられます。人間だれしも自分の存在意義を認め、生きていることを実感させる何ものかを有しており、生きがいはどの世代においても重要なものですが、特に高齢期で生きがいが問題となる場合が多いようです。この背景には、高齢期においては定年退職などによる経済的基盤の喪失、身心の健康状態の悪化、子どもの独立、配偶者や友人・知人の死、あるいは社会的つながりの喪失などさまざまな局面における喪失があり、生きがいが失われたり変容する場合が多いことがあげられます。しかし、一方では、家事を含む労働から開放され自由時間は多くなったり、健康を害してはじめて障害者のつらさ、人の心の暖かさがわかる場合もあります。逆に社会的つながりの喪失にしても、他人に拘束されにくい生活、複雑な対人関係からの解放など、新しい生きがいづくりに有利な側面もあります。
 生きがい喪失の予防には、喪失体験の人生にとって否定的な側面だけでなく、肯定的な側面にも目を向けること、また、喪失を補完するために生きがいの源泉を複数もち、それを支援する体制を作り上げることが必要と考えられます。現在わが国では、主な生きがい対策として、生きがいを生み出す主な源泉として就労と余暇に重点をおき、政策的にはシルバー人材センターや高齢者無料職業紹介所が設立運用されています。また、老人クラブ助成事業や、老人憩いの家などが開設されたり、老人大学や公開講座など多面的な対策が講じられています。余暇活動の実態についてみると、東京都福祉局の高齢期の余暇活動の参加状況の調査結果では、65歳以上の男性の53.2%、女性の57.6%が特に何も活動していないとの回答でした。年齢が高くなるに伴い、余暇に特に活動しない者の割合は高くなり、85歳以上では70.4%にもなります。また、余暇活動の参加状況は経済状態にも大きく影響され、本人の年収が少ないほど、余暇に特に何もしない者の割合が多くなっています。労働に生きがいをもつ高齢者も多いのですが、近年高齢者の就労は困難な状況が続いていて、定年制により、強制的に失業者、あるいは低賃金労働者としての生活を余儀なくされている者が多くなっています。高齢者の労働力率も減少傾向にあります。老後の就労や余暇活動が生きがいとして成り立つためには、老後の所得や医療、住宅など生活全般にわたる十分な保障と、継続雇用の推進、社会活動参加の機会の確保が重要な課題と考えられます。

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